エッセイ

世界の地元メシ

台湾のおやつ汁粉

台湾は一回しか行ったことがないのだが、4か月ほど滞在した。きっかけは、台湾にすごい占い師がいる!っていう噂をききつけて、興奮してすぐチケットを買って興味本位で飛んでいき、あまりのごはんの美味しさに、そのまま帰りの旅券を捨てて居ついた感じでの滞在だった。

アジア圏なのでほかの国での旅に比べれば何でもお安くて、節約とは無縁の生活が送れるのでとにかく気楽。あー、たーのしーい♪ このまま住み続けてもいいかもと思うくらい気に入っていた。

屋台で豪遊してもたかがしれているため、何の料理なのかもわからないお品書きを右端から順番に頼んでいっても、美味しいものしか出て来ない。そう、台湾って、本当に何を食べてもおいしいのです。

3~4週間も朝昼晩で外食するとたいていのものは食べてしまうので、普段はあまり気にかけないスイーツが気になりだし、タルトやパイナップルのお菓子などを順番に買って試していた。

タピオカなどが流行したおかげで、今は日本にもあるのだが、当時は、台湾のお菓子は日本では滅多にお目にかかれなかったので、その素朴な味わいに「こういう身体によさげなお菓子が、もっと日本にもあったらなあ」と思っていた。和菓子とも違う、もっと、身体のことを全体的に考えたおやつ。

そのお菓子類の中でも一番気に入ったのが、今だと日本で「芋園」「芋圓」というメニューでたまに見かける、いわゆる台湾のお汁粉。

街角に小さなお汁粉スタンド(こっちのフルーツジュース売り場的な位置づけで、外で勝手に座って食べる形式)があり、どでかい寸胴鍋で煮られた小豆・サツマイモ・緑豆・なんらかの豆類なんかを、薄い甘いあんこ汁の中に、好きなだけトッピングできる。

仕上げに、芋餅と白玉と餅のあいのこみたいなやつと、座布団型のタピオカ、落花生やハスのタネなんかを煮たやつ、どうみても求肥というものを、どんどこ突っ込んでいき、最後にまた薄い汁粉の上澄み液みたいなのをドバっとかけて出来上がり。お店によってトッピングできるものも、汁粉の甘さも違って面白い。

全体的に味はうす甘く、豆には軽い塩味がしていて、甘いものが苦手な人でも食べられるだろう。あまりにサッパリしていて、そもそもスイーツを食べている実感もないと思う。暖かいのも冷たいのもあり、冷たい場合はふんわりしたかき氷みたいなものの上に、さっきのセットがドバっとかかる感じだ。

旅行者向けに、マンゴーやメロンを乗せるセレブメニューもあるが、そんなことをしなくても、最安の汁粉だけで十分美味しい。

当時は一杯100円くらいだったのだが(ちなみに有名な小籠包屋が一皿500円ほど)、その分量は1人分、軽く富士そばのどんぶりくらいはある。無料だからって気軽に餅類を大盛オーダーすると、食べている途中に汁粉と餅類のバランス配分が崩れて、最後に大変な思いをすることになるので、気を付けてくれたまえ。

しばらく通っていたので、汁粉屋のおばさんと少しだけ会話が成立するようになった。互いの共通語はないのだが、漢字圏の人同士なので筆談が成立するってことを知り、長期の英語での暮らしと比べて、その便利さに軽いカルチャーショックをうけた。

さて、お汁粉スタンドのおばさんが言うには、豆類にもそれぞれ効果効能があるらしく、季節によって食べ分けるのが良い、と。この汁粉のメインは豆類の選び方にあり、餅類はおまけみたいなもんよ、ということだった。

その当時は夏だったので、おばさんが自然に緑豆と青パパイヤの千切りみたいなのを多めに入れてくれるようになっていた。少し前はオレンジの皮みたいなのが乗っていたのに、どうしてなのか気になって聞いてみたら、そういうことだった。

なんでも、緑豆には身体の熱を取る効果があり、パパイヤの千切りみたいなのには、汗で失われたミネラルを補給する効果があるのだそうな。ただのどうってこともない汁粉なのに、季節に合わせて体調管理ができる(しかもその効果がある)スイーツがある台湾を、すごいところだなって思った。

今でこそ、ロハスで健康的なのがお洒落さんのステキな生き方………みたいな風潮があるが、多分台湾って、台湾ができたころからナチュラルにずっとこうなんだろうなあ。

ちなみに、その時のそのおばさんは今の私くらいの年齢であり、今の自分が到底マネ出来ないような肌艶の良さや、髪の毛の黒さとハリ、瞳の輝き、働くお母さんなのに全体的にくたびれていない感じだったことなどが思い出され、その豆類の年間アレンジの賜物なのかもしれないと、この記事を書きながら気が付いた。

2020年から世界が新しいルールで生きるようになり、あの汁粉スタンドに次回行けるのはいつになるのかもわからないけど、旅の途中で教わった先輩の知識って本当に役に立つことが多いとわかったので、今後は、思い出しつつ、生活に取り入れていこうかなーと思った。

ちなみに私が在台湾中は有名占い師は全く予約が取れなかったので見てもらうことはなかったが、私が帰国した後に、友人が弾丸占いツアーで見てもらって、帰国1週間後に婚活パーチ―で相手が見つかりスピード婚したことを付け加えておく。

台湾汁粉は日本でも食べられるとは書いたけど、日本で作られるものはどれもきちんとしすぎていて分量も少なく、ちょっとニュアンスが違うので、コロナが明けたらぜひ台湾まで行ってみてほしい。似た感じのものは、以下のお店で食べられますよ。

プロフィール

ほしのしょうこ

25年ほど雑誌・WEBマガジンなどで記事を書き散らしているフリーライター。 副業でWEBデザイナー崩れもしている。趣味は散歩と仕事。重度の放浪癖があり世界を鞄一つで浪漫飛行していた。現在は頑張って日本に定住中。

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