エッセイ

世界の地元メシ

スペイン人に教わったキウイの美味しい食べ方

3連続でスペインごはんのこと話しているので、スペイン系ってのはごはん美味しかったんだなーといまさらですが思っています。さて、今回は美味しいキウイのデザートです。

これは、在イタリア時に、スペインからイタリア語留学に来ていた中年女性サンドラさんに教わったものです。日本でもできるので、ぜひやってみてね。

私がローマの駅前で借りていた部屋は、イタリアのテレビ会社が運営している寮みたいな機能があるマンションだったので、本当にしょっちゅういろんな国の人がクルーとして来ていた。で、そういう人たち用に、中二階に小さなホールみたいなのがあって、そこで打ち合わせみたいなのができるように小さなカフェコーナーがあった。

カフェは自分で淹れるんだけど、常に掃除のオバサンが陣取ってサボっているので、たいていは入れてもらえる。それで、そのカウンターのところに果物が大きなバスケットに入って置いてあるのだが、飾りみたいなもんなので、全然誰も手を付けないから、いつも果物すべてがシナシナになるまで飾ってあった。

ある日、スペインからイタリアに語学留学に来たサンドラさんが入居することになり、マンション内を案内してあげていると(何故か、そんな雑用までさせられるようになっていた)、シナシナになっているフルーツバスケットの中をじっと見つめている。

「あのー、これは、このあと、どうしますか?」
「いやー、たぶん、捨てちゃうんじゃない? それか、掃除のおばちゃんが持って帰ってジャムにして持ってきてくれる時もあるけど」
「おおおおおー、ノー! 私これ、食べたいですー」

と掴んだのが、キウイだった。完熟と乾燥がいっしょくたになった見た目がほぼ泥付きジャガイモなキウイ持ちながら、今度は私をじっと見つめるサンドラ。

「あ、別に食べてもいいんだよ? ここに住んでるみんなのだし、普段から誰も食べないから、持って行っても大丈夫だよ」

というと、うれしそうにカバンの中に、その時あったキウイをウキウキと全部入れていた。しかし、あんなのどうやって食べるのかな? 砂糖で煮るのかな?と思っていると、その日の夜、ドアをコンコンとノックしてサンドラがやってきた。

「キウイのお礼にキウイ持ってきましたー」(本当にこう言った)

そう言って、ガラスの器にこんもりとした白いものがかかった何かを持ってきた。それは、シナシナキウイの中身をほじくって出したものの上に、ホイップしたヨーグルトがどっさりかかり、その上には、なんと白ゴマが、これまたたっぷりかかっていた。

「これ、私の家と家の近所ではごちそうデザートです」

そう言って私と一緒にテーブルについて食べ始めた。私は、キウイ+ゴマという斬新な組み合わせに内心ドン引きしながら、でも、とりあえず一口。

えーーーー、おいしーーーーい、なにこれーー。

本当に、甘く熟したキウイに、大量のヨーグルトと大量の白ごまがかかっているだけなんだけど、甘い・酸っぱい・香ばしい・カリカリが全部合わせって、確かにごちそうデザート。

キウイの種のプチプチカリカリと、熟した実のねっとり感、新鮮なヨーグルトの酸味、白ごまのプチプチが口の中で気持ち良い。

噛むと大量な白ゴマの香ばしさがヨーグルトの脂肪分と合わさって高級生クリームみたいだ。すごーい、何これーと感動しながら、ほぼ丼の大きさなガラスに入った量をガツガツ完食。いや、これは美味しい、衝撃的だ。

「うふふ。美味しいでしょ?」

ドヤ顔で笑顔のサンドラ。彼女に言わせると、生のフレッシュなキウイでもいいのだけど、濃厚さに欠けるので、わざと完熟させてからこのデザートにするのだそうです。

ちなみに私は翌日、スーパーで買った生キウイで同じようにやってみたけど、美味しいけども、ちょっと水分が多いかな。これだと、キウイにヨーグルトをかけたものであって、昨晩のようなスペシャル・デザートの域には到達しない。

後でサンドラが教えてくれたけど、その場合は、ヨーグルトを少し水切りしないとならないけども、それだと面倒だから、キウイを熟させる方がカンタンなのだそうだ。ま、そりゃそうだ。

というわけそれ以来、自分たちの部屋でも一生懸命キウイをシナシナ化させていたけど、美味し過ぎて、食べる速度に全く追い付かないので、もちろん中二階カフェコーナーのバスケットの中のキウイもわれわれ2人のキウイ・カウントに入れて、定期的にシナシナ具合をチェックしにいくようになった。

何だかやたらとカフェに顔を出すようになったので「なんかあるの?」って掃除のおばちゃんに聞かれたが、掃除のおばちゃんに教えてしまうと、即日、間違いなくバスケットごと持っていかれるのがわかっているので「なにもー?」とすっとぼけ。

そういうわけで、50世帯くらい入っているローマ駅前のマンションのプチ会議室では、怪しい東洋人と怪しいスペイン人の女性2人組が定期的にしなびたキウイだけを持ち去るようになったそうな。

プロフィール

ほしのしょうこ

25年ほど雑誌・WEBマガジンなどで記事を書き散らしているフリーライター。 副業でWEBデザイナー崩れもしている。趣味は散歩と仕事。重度の放浪癖があり世界を鞄一つで浪漫飛行していた。現在は頑張って日本に定住中。

写真
このシリーズの一覧へ
エッセイをすべて見る
47PRとは
47PRサービス内容