エッセイ

47のシアワセを追いかけて

身の危険を感じる!? 個性豊かな温泉に浸る秋田の旅

4年ほど前に「温泉ソムリエ」を取得してから、各地の温泉を訪ねることがさらに楽しみに。あちこち訪ねる中で、非常に強烈な印象を残したのが秋田の新玉川温泉と乳頭温泉郷でした。 

玉川温泉は長い歴史を持ち、一カ所から毎分9千リットルという日本一の湧出量と、世界でも珍しい塩酸を主成分とする強酸性の泉質を持つパワフルな温泉です。古くから岩場で岩盤浴をする湯治場として有名になったところ。戸外にある源泉湧出口からは98℃の熱湯が噴き出しています(※写真は夏場の玉川温泉)

しかし玉川温泉はかなり雪深い山中にあり、冬季は閉鎖になります。そこで、近くにあり冬の間も営業している新玉川温泉のほうを訪れました。「新玉」はまだ1998年にできたため、湯治場というよりリゾートホテルのよう。

肝心のお風呂はというと、内湯の大浴場は広々として実に圧巻。浴槽から壁、天井に至るまで酸性に強い青森ヒバでつくられ、源泉100%、50%、あつ湯、ぬる湯、横たわって入る浸頭湯、刺激の少ない弱酸性の湯、打たせ湯、箱蒸し湯など14種類のお風呂が並びます。

私が入ったときはほかに人もおらず、わーい貸し切りだ~とテンションアップ。迷うことなく源泉100%を選び、ヒバの香りや風情のある雰囲気を味わいながら、いい気分になっていたところ……何やら体のある部分がピリピリしてきます。

最初はなんとなく気になる程度でしたが、やがて違和感が高まってきた部分とはどこかといえば、なんというか、まあ、下半身で。ぶっちゃけてしまえばお尻というか、股ぐらというか。つまり粘膜から成る皮膚のやわらかい部分が痛くてたまらなくなり、もう入っていられませ~ん!

酸性のお湯といえば、草津などが有名です。皮膚に傷口があったりすると刺激を感じるというのはよくいわれますが、傷がなくても強い刺激を感じるのは初めての経験。

その後、滞在中に何度か入りましたが、結局1分と浸かっていられず、ここでは源泉50%のぬる湯に浸かるのがベストという結論に。

実は公式サイトにも「初めての人は源泉50%から」とあるのですが、後にも先にもこんな経験は初めて(今のところ)。こうした強めの泉質を持つ温泉に入る場合は、

(1)長湯しない、
(2)出たら洗い流す(※普通の温泉は流さない方がよい)

の2点を守って健全にお楽しみいただくとよいようです(汗)

さて、おまけ状態でお伝えするのはもったいなさすぎる乳頭温泉郷ですが、ここはもう秘湯中の秘湯。 秋田藩主の湯治場だった由緒ある温泉で、茅葺き屋根の長屋、乳白色のしっとりした泉質、いろりでいただく山の芋鍋など、ぜひ一度は行ってほしい!

かくいう私は、人気すぎてやはり予約はとれず、宿泊は乳頭温泉郷の別の宿でした。それはそれでよかったのですが、気になった別のお話を。

それは女子にとって重要な「混浴問題」。

古い温泉は混浴のところが多くあります。私も何度か入ったことがありますし、専用の湯あみ着も持っています。実際のところ、混浴がメインでも女性専用のお風呂も用意されているのが多いパターン。

鶴の湯の場合、一番絵になる有名なお風呂が男女混浴でした。あまり大きくはありません。訪れた日は結構混雑していました。

敷地の中心部にある露天の混浴風呂は、竹の間仕切りをはさんで通路のすぐ脇にあり、外からよーく見えます。やはり男性が多いですが、なんと女性も入っています!

一番いいのは、宿泊して夜の闇に紛れて入ることですが、このとき私は立ち寄り湯として真っ昼間に訪れたわけで。

天下の鶴の湯、やっぱり入りたい~!

「女子更衣室からお風呂までつながっている」との触れ込みだったため、一応チャレンジしたのですが、なんと湯あみ着が禁止(なぜなのか聞きたい!)そして、つながっているとはいっても湯に入った状態でお風呂にたどりつけるわけではなく、湯の入り口までは歩いていかなければなりません。

意を決してのぞき見ると、合流地点には知らぬそぶりで陣取っている殿方が……。

まずちらっと顔を出したところ、すぐに目が合い(笑)。断念して引き返し、結局女性専用のお風呂に入りました……(そこも良いお風呂でしたが♪)。

山の中などに自噴する自然の温泉を「野湯(のゆ)」と言いますが、こういう場所や混浴のお風呂にねばって女性を待ち構えている輩を、温泉用語では「ワニ」と呼びます。

見たい気持ちはわかるけどさ~。

プロフィール

杉浦美佐緒

愛知県出身。カメラマン・編集者を経てフリーライター。旅をはじめ、美容・健康・癒し・ライフスタイル全般を幅広く手がける。好きな食べ物は熊本の馬肉、京都のサバ寿司、仙台のずんだもち。憧れの旅人は星野道夫。旅のBGMは奥田民生の「さすらい」~♪

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