エッセイ

47のシアワセを追いかけて

豊かな香りと琥珀色の余韻に酔いしれる山梨の旅

森の中に聞き覚えのあるフレーズが流れています。「♪ダン・ダン・ディダン・シュビ・ダダン…」という耳になじんだあのメロディ。これはなんだっけ…。ゆっくりと記憶の底から立ち上ってきたのは、「恋は遠い日の花火ではない」というキャッチコピーで、長塚京三や田中裕子が出ていた「サントリーオールド」のあのCM! 

そう、ここはサントリーの白州蒸留所。風に乗って麹の香りも漂ってきます。

父も母も飲める口だった杉浦家ですが、毎日の晩酌で鍛えられたとはいえ、無茶飲みしての失敗は数知れず。しかし自他ともに認めるくいしん坊ぶりも手伝って、立派なオールラウンド・ドリンカーに成長しました。そしてこの秋から放送されている日本のウイスキーの父ともいえる竹鶴氏をモデルにしたドラマにも刺激されて、思い立ったが吉日と特急あずさに飛び乗ったというわけです。

さて「森の蒸留所」とも呼ばれる白州蒸留所は、甲斐駒ヶ岳の裾野の自然豊かな場所にありました。秋晴れの空の下、野鳥のとびかう森の中を散策したら、まずは腹ごしらえ。敷地内にあるレストランは落葉松の林に面したいい雰囲気なのです! 迷った挙句、白州産のソーセージやハム、ウイスキー樽で燻製したチーズ、周辺の地野菜を乗せたオープンサンドをセレクト。しかしウイスキーはまだガマン…。

いよいよ満を持して蒸留所見学へ。まず最初の「仕込」の工程では、巨大なステンレス製の仕込樽の中で大麦麦芽からできた麦芽と白州の名水から麦汁がつくられます。次にそれを木桶で「発酵」。麦の糖分に酵母の働きが加わって原酒が作られ、次の「蒸留」の工程へ。白州では大小さまざまな形状のポットスチルで多様な原酒をつくり、そこから個性豊かな味わいに仕上げていくのだそうです。

すごかったのは貯蔵庫でした。ビル数階分の建物の中に、見渡す限りウイスキー樽が並んでいます。一歩足を踏み入れた途端に、むせかえるようなウイスキーの香りが「襲いかかって」くるのです! 空気感染ならぬ空気飲酒!? 毛穴から酔うなんて初めての経験です。お酒たちは静かに眠っているというより、ゆるりと楽しげに熟成の時を重ねているよう…。

やがて夢うつつの状態で試飲会場へ。私が選んだのは4種のウイスキーの飲み比べ講座。テーブルには「白州」「響」に加えて、本場スコットランドの「ザ・マッカラン」「ボウモア」のグラスと、氷、水、炭酸水におつまみまで! テイスティングしたり、おいしい飲み方のコツを教わったり。シアワセな時間はあっというまに過ぎていきました。

食べ物でもお酒でも、できあがるまでの過程を体感すると思い入れがさらに深まります。とくにウイスキー、文字通りの時間の芸術品。これはやみつきになりそうです。次はワイナリー? それとも蔵元めぐりかしら♪

プロフィール

杉浦美佐緒

愛知県出身。カメラマン・編集者を経てフリーライター。旅をはじめ、美容・健康・癒し・ライフスタイル全般を幅広く手がける。好きな食べ物は熊本の馬肉、京都のサバ寿司、仙台のずんだもち。憧れの旅人は星野道夫。旅のBGMは奥田民生の「さすらい」~♪

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