エッセイ

47のシアワセを追いかけて

古都の雅びと源氏物語の舞台をめぐる京都の旅

「いずれのおんときにか、女御・更衣あまたさぶらひたまひけるなかに……」
そう、これは源氏物語のはじまりの一説です。

宮仕えをしていたある女性が天皇の愛を一身に集め、周囲から妬まれて亡くなってしまいます。残された息子は名うてのプレイボーイに育ち、やんごとなきご婦人や令嬢を相手に華麗な女性遍歴を繰り広げます。その中には父の愛人や、憧れの女性に似た幼な子を半ば強引に引き取って育ててみたりと、まさに男の欲望の見本市。幅、広すぎ!

なぜ女性たちは、こんなちょいワル男にハマってしまうのか…?

源氏の君は、自分が手を付けた女性を放り出すことはしないし(間違って夜這いしてしまった女性さえ、ちゃんと面倒を見るのです!)、身勝手さも含めて自分に正直な源氏はなんだかやっぱり魅力的。しかし最後は自業自得な目に遭って、さびしい老後を送ります。

平安神宮栄枯盛衰は世のならい、そこから漂う古式ゆかしきもののあはれ…。

おっと、前置きが長くなりました。女子なら一度はハマる源氏物語は、色恋沙汰だけでなく家族愛や友情も含めた第一級のエンターテイメント。そして京都こそ、その舞台です。

そう、京都の旅はいわばロケ地ツアーなのです!

グンちゃんならぬ、源氏の“ゲンちゃん”が紫の上を見つけたのが「鞍馬寺」らしいと聞けばその世界に酔いしれ、源氏の妻を呪い殺すほどに嫉妬した六条御息所が諦めて去っていく場面となる「野宮神社」の情緒にしみじみとしびれ、息子・夕霧の別荘の地とされる「平等院」では荘厳な世界観に心ときめかせ…。21世紀と平安時代を行きつ戻りつするパラレル旅のなんと楽しいことか。

物語の世界だけではありません。作者の紫式部自身が構想を練るために“缶詰め”になったという「石山寺」にいけば、本殿の一角に世界最古の長編小説を生み出した女流作家の小部屋が! これにはまさに萌え~な気分。

AKBの握手権を求めて有り金はたいたり、恍惚として鉄道写真を撮りまくる若者たちもこんな気持ちなのでしょうね。宇治の抹茶スイーツをほおばりながら、歴女の妄想はどこまでも続く~。(京都旅は坂本龍馬バージョンもあって忙しいのだ!)

プロフィール

杉浦美佐緒

愛知県出身。カメラマン・編集者を経てフリーライター。旅をはじめ、美容・健康・癒し・ライフスタイル全般を幅広く手がける。好きな食べ物は熊本の馬肉、京都のサバ寿司、仙台のずんだもち。憧れの旅人は星野道夫。旅のBGMは奥田民生の「さすらい」~♪

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