エッセイ

47のシアワセを追いかけて

「神話の世界が息づく高千穂の旅」後編

世の中はパワースポットブーム。私の聖地好きは結構年季が入っているのだけれど、高千穂に行きたかったのには、もうひとつ理由がある。一時期は時の人だった宮崎の元東国原知事が地元宮崎に戻る前、高千穂の「天安河原」に行き「帰ってきなさい」というお告げを聞いたとか。数年前に江原さんと美輪さんの番組でその話を聞いてから、ずっと気になっていたのだ。

さて前回、「30分2000円」に打ちのめされた私。天岩戸神社近くの「天安河原」へは歩いていける距離ではなかったのでタクシーをGET。ここはまあ、いちおう大人ですから。
もう、行くしかない♪

国道から渓流沿いに入り、しばらく歩く。木々が濃い影を落とし、清らかな瀬音とどこまでも澄んだ水の流れはこの世のものとは思えないほどだ。木漏れ日が反射する流れの中で、ヤマメが一匹しなやかに身をくねらせた。きれいだなあ…と思いながらシャッターを切る。

なんだこりゃ!

天岩戸神社撮った写真に自分で驚いた。あまりに透明なために水面は見えず、まわりの岩や植物でようやくそれとわかる感じ。光が当たってきらめくさまは、アンドロメダ星雲のよう。やっぱりここは何かある、そんな気になった。そして歩くこと10分、ようやく天安河原と呼ばれる場所に到着した。

大きな岩の陰に小さな祠。通路の脇、場所という場所にすきまなく大小の石が積み重ねてある。あたりはうす暗く、石のひとつひとつに願望や執着がこめられている…そんな感じ。行ったことはないけれど恐山みたい。目の前の川は三途の川? とても長居する気にならず、そそくさとその場を後にした。

第二の目的地には5分もいなかったが、高千穂の自然はとても豊か。ここは例の天照大神が閉じこもってしまった話で、神々が集まって相談をした場所と言われている。神話では、この事態を打開したのが天鈿女命(アマノウズメノミコト)。人々の前で踊って盛り上げ、その楽しそうな雰囲気につられて天照大神が顔を出したと。

そこから来ているのか、高千穂には神楽の伝承がある。高千穂神社では毎年11月から2月という農閑期に夜神楽を実施するそう。そこで夜になって神社へ向かった。伝統芸能って、ありがたい感じだけどきっと難しいんだろうな…なんて思い、正直期待はしていなかった。

前半は神話をもとにした舞が三つ。最後の4つ目の演目では日本の国を作ったイザナギとイザナミが現れ、二人仲良くお酒を作って睦みあう「御神躰の舞」だ。

「アンタ、まじめに働きなさいよ!」なんて奥さんに怒られていたかと思うと、いちゃいちゃしたり、観客席に乱入したり、やりたい放題。

神様、素朴だなあ~。

お腹を抱えて笑いながら、ああこれが大衆芸能なんだ。こんなに笑わされて盛りあがったら、お隠れ遊ばされていた高貴な人だって出てきちゃうよ…と実感させられた。

天鈿女命って、さぞかしスターだったんだろう。そんなに人々を夢中にさせるなんて、今でいえばAKBとか、潮騒のメモリーズ? そんなふうに思っていたら、翌日高千穂神社そばに天鈿女命の石像を見つけた。

あらっ、うずめちゃん…親しみやすいけど、ずいぶんおばさんだね?

プロフィール

杉浦美佐緒

愛知県出身。カメラマン・編集者を経てフリーライター。旅をはじめ、美容・健康・癒し・ライフスタイル全般を幅広く手がける。好きな食べ物は熊本の馬肉、京都のサバ寿司、仙台のずんだもち。憧れの旅人は星野道夫。旅のBGMは奥田民生の「さすらい」~♪

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