エッセイ

47のシアワセを追いかけて

お墓の前で女系天皇の嘘を叫ぶ奈良の旅

けなげで可愛らしくて、ずっと見守ってあげたい……。
日本人の大半が、彼女のことをそう思っているでしょう。
彼女とは誰かといえば、愛子内親王。
私も同じ気持ちだけれど、愛子さまは天皇にはなれません。というか、なってはいけない。ならなくていい。
それはなぜなのか、ということについて。
 
 
私は神社・仏閣や聖地めぐりが好きで、いろんなところへ出かけてきました。
京都・奈良もたびたび訪れてきたものの、近鉄の路線図を見ながら、後回しになっていたのが「橿原神宮」でした。でも、この夏たまたま関西に用事があり、帰りにどこかへ寄ろうかと考えた時に「そうだ!」と思い立ったのでした。

「神宮」と呼ばれるお宮は、皇室の祖先神や歴代の天皇をおまつりしていたり、皇室とゆかりの深い神社を指します。橿原神宮の場合、日本の初代天皇である神武天皇がご祭神。神武天皇が即位された時が紀元元年で、まさしく日本のはじまりというわけです。(※境内に、今年は皇紀2685年と記載が)
 
 
訪ねたのは8月下旬でした。
メディアが「不要不急の外出は控えて」と呼びかけるほどの猛暑。広々とした境内には参拝者はほとんどいません。巨大な鳥居の下にのびる長い参道も貸し切り状態。
おごそかな気持ちでお参りをすませた後、そこから北へ10分ほどのところ、もうひとつずっと行ってみたいと思っていた「神武天皇陵」へ向かうことに。
 
 
入り口には石碑とわずかな注意書きのみ。石の橋を渡り、大木に守られたゆるやかな参道をゆるゆると進んでいくと、奥のほうに鳥居が見えてきます。

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格式高い3基の鳥居に守られた先には、広大な森が広がっているようにしか見えませんが、それこそが1万平方メートルの陸墓。ここに初代天皇が眠っています。

愛子さまは大学卒業後に、そして、今年9月に成年式を終えられた悠仁さまもここに参拝されていました。彼らにとってはご先祖のお墓参り。偉大なおじいちゃんに報告をしにきたというわけですね。

天皇の血筋は、「万世一系」といわれるように連綿と「皇統」が継承されてきました。
重要なのは、皇統は「男系」の「男子」によって維持されること。それはつまり、父の父をさかのぼっていくと初代・神武天皇に必ずたどりつくことを指します。日本では権力と権威は分けられ、それゆえ時代の移り変わりがあっても、皇統は途切れること無く血筋による「正統性」を保ってきたのです。

ところがいま、「愛子さまが天皇になればいいのに」と思う人が増えているといいます。
「歴史上では女性が天皇になったこともあるでしょう」とも。かくいう私も以前はそう思っていました。

調べてみてわかったのは、「女性天皇」はあくまでも男系男子へのつなぎであって、女性天皇の子どもは天皇になれないこと。だから、今の制度のまま、愛子さまが天皇になったとしたら、結婚して子どもを持つことは許されません。少なくとも過去の女性天皇はそうでした。

「今の時代、男女は同権だから」といって女系を容認するのは、極端に言えば誰でも天皇になれてしまうことになるのです。正統性を失うことは、象徴としての権威が揺るがせ、日本の国のかたちをゆがめてしまう。だから、男女差別とは次元の違う問題なのです。

「それでは天皇制が崩壊してしまうのでは」という意見もありますが、現存する宮家に旧皇族から養子を取るなどして皇統を守ることはできます(皇統がつながる先に複数の男子がいることはあまり知られていません)。そのためには皇室典範を一部変えなければいけませんが、女系天皇を認めるしか皇室の未来がないとか、それが進歩的な考えであるかのようにごまかす論調に踊らされてはいけないのです。

だから、愛子さまは自分の幸せを追求していいし、皇族を離れる自由だってあるのです。
畝傍山の麓で眠るすめらみことは、「右往左往」する子孫たちを笑っているかもしれません。
 
 
※参考資料『なぜ女系天皇で日本が滅ぶのか』(門田隆将・竹田恒泰/ビジネス社)

プロフィール

杉浦美佐緒

愛知県出身。カメラマン・編集者を経てフリーライター。旅をはじめ、美容・健康・癒し・ライフスタイル全般を幅広く手がける。好きな食べ物は熊本の馬肉、京都のサバ寿司、仙台のずんだもち。憧れの旅人は星野道夫。旅のBGMは奥田民生の「さすらい」~♪

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