エッセイ

世界の地元メシ

アメリカで牛丼

え、お米、高くない?高いよね。5キロで5,000円なんて、どこの最高級魚沼産かよって思うが、普通にパールライスとかだからビックリするよ。今日はお米の話だよ。

16歳のアメリカ滞在時のお話、第2話。(1はこちら)この時の短期留学に参加したのは、全国から40人くらいはいたと思う。それでね、やっぱり、食の事情がホームステイ先で全然違うので、キツイ子はホントにしんどかったと思うんだよね。

基本的に肉食のご家庭が多いので、どこの家でも、だいたい牛ステーキ・グリル肉・ハンバーガーを繰り返している感じ。当時の日本の食生活ってそこまで肉オンリーではなかったと思うので、たしかに2ヶ月肉だけは辛いよね。

あと、みんなが口をそろえて言うのが、薄切り肉がないのが厳しいってこと。とにかく、分厚い固い肉を塩コショウだけで噛まなければならず、それがシンドイのだとこぼしていたな。お箸の国と、フォークとナイフの国の違いだよね。

学校には毎日通っていたのだが、週に1回、留学生と地元学生の懇親目的で、近場のショッピングモールで外食するっていう行事があったの。滞在から1ヶ月目になんと!エリア初の吉野家が出来たのね。当然、その週はみんなで吉野家に集合でございます。

当時の日本って、アメリカからカリフォルニア米を輸入しろだの、オレンジをもっと買えだのなんだの言われている時代で、私たちだってカルフォルニア米なんて食べたこともなかったから、どんなお米なのかもわからないわけ。

日本食に飢えた子たちが「ああー、もし長くて固いお米だったらどうしよう〜」って本気で心配していた。プラスチックのどんぶりで運ばれてきた牛丼は、見た目は普通の吉牛。食べてみると、なるほど、ちょい長めだけど、まあ、日本人が思う「ごはん」に近いかなっていう出来栄えでした。

学校でよくとなりの座席になるヨリ子は、どんぶりに入ったお米を見ただけで泣いてしまっていて、本当に食の事情が人を追い詰めたりするんだなーって、思ったよ。

アメリカに限らず、海外のお米は水分との相性が悪いのか、日本の米みたいに汁を吸わないんだよね。なので、そのときのアメリカ吉牛は、プラスチックの丼にテイクアウト用の蓋が最初からついていて、それで数分、蒸らしてから食べるっていう食べ方をしていたのね。

ダメってわけじゃないけど、チーズバーガー2ドルのところ、牛丼に6.9ドル(味噌汁つかない)も支払ってるわけなので、もっと牛丼したいわけですよ。普段から日本でよく吉牛に通ってる男の子たちが「汁ダクにすればいいんだよ」って言いだし、それを店頭に提案しに行ったわけ。

だけど、そこのスタッフだって、牛丼がなんだかもわからないで販売している状態だから「マニュアルにないから出来ないし、だいたい、それはなんだ?」ってことになった。

そこで、我々は、吉牛シアトル支店のアメリカ人スタッフたちに、汁ダクメニューをオンさせようという計画を立てたわけですよ。アメリカ人の良いところって、こういう風に新しいトライに動きだす時、大人も子供も一緒になって面白がって応援してくれるんだよね。

汁ダクのすばらしさをレクチャーするために、伝えたいことを文章にし、それを英語に訳し、さらにそれを地元学生に発音を直してもらい、学校の先生たちから効果的なプレゼンテーションの仕方を習い………と、本当の「生きたアメリカと米語」ってやつが身に付いた汁ダクの2週間だった。結果、私たちは滞在中に、汁ダク牛丼を追加料金なしで食べられるようになったのだった。

お米のことじゃなければ、あんなに頑張らなかっただろうから、日本人のお米への熱い思いは、昔も今も、全然変わらないんだなあって思うよ。まあほんと、どーでもいいから、早く、米を元の値段に戻してくれよ。

プロフィール

ほしのしょうこ

25年ほど雑誌・WEBマガジンなどで記事を書き散らしているフリーライター。 副業でWEBデザイナー崩れもしている。趣味は散歩と仕事。重度の放浪癖があり世界を鞄一つで浪漫飛行していた。現在は頑張って日本に定住中。

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