エッセイ

47のシアワセを追いかけて

ちょっとセンチな千葉の旅

1、ちょっとセンチな千葉の旅

それは突然やってきます。

「どっか行きたい!」

まさに、”よばれる”ってやつでしょうか。

私の”ひらめき”放浪癖は、けっこう年季入ってます。最初の旅は小学2年。おばあちゃんの家から「いとこの●●ちゃんの家に行こう!」と踏み出したのがはじまりです。ああ、カメラ回してほしかった~。幼稚園生の弟を連れた「はじめてのおつかい」旅!

姉と弟。いい絵ですね~。手なんかつないじゃって、2人はある川にかかった線路橋にさしかかります。

この矢作川、なんと一級河川です。東京でいえば多摩川ほどのけっこうな川幅。そこでなんと、幼いわたしは「絶対に川の向こうだ!」と思いこみ、泣いて止める弟を振り切って、線路を渡りだしたのです。

気分は「スタンド・バイ・ミー」。田舎の電車ですから単線です。橋には10m間隔位で待避所があるんですね。小学2年生の頭は意外と冷静で、(何かあったらあそこに逃げればいい)と思ったことを覚えています。子どもってスゴイ。

渡りきる間に電車は来ず、結局少し先で間違いに気づきます。次の駅が無人駅だったため、そこから電車に乗り「切符をなくした」と車掌さんに言って帰ってきたというお話。ちなみに私が置き去りにした弟は、ビービー泣いていたところを通りかかった人に拾われて、交番経由で帰宅していました。弟は、私が渡りきったあとに一台電車が来たので、「お姉ちゃんがひかれちゃった~」と泣いていたそう。

今思えば、わたしの人生ずっとそんな調子。「無謀」が服を着て歩いているようです。あのころに比べてお小遣いがちょっと増えて、移動距離が少し延びただけ。やっていることは変わりません。

さて本題。そう、千葉です。「しおさい1号」の切符を手に路線図を眺めていた私は、ある地名にくぎ付けになりました。視線の先は…「八街」。駅前に落花生の像(!)まである「日本一の落花生の郷」です。実は私のふるさとも落花生の産地。ここに行かずしてどこに行く!と途中下車。

ん? みそピー!? なんと蛇道な!! 落花生は塩ゆでと決まっています!

ゆでたての豆はほんのり甘くてみずみずしく、赤ちゃんの耳たぶより数倍もやわらかい。じんわりと潮の香りさえ漂うんだから。

落花生の記憶は、私をある夏に誘います。

あれは5年生の夏休み。2学期から転校することになった私は、ひとりぼっちの夏休みを気ままに過ごしていました。青い空、ひまわり、アニメの再放送。プラスチックのザルを抱え込むようにして、茹でたての豆を無心で口に運ぶ。ぽっかりと空いたエアポケットのような夏。

不安? それとも、新しい土地への好奇心? 

記憶の中の豆は尽きることがなく、夏は永遠に終わらないのです。

プロフィール

杉浦美佐緒

愛知県出身。カメラマン・編集者を経てフリーライター。旅をはじめ、美容・健康・癒し・ライフスタイル全般を幅広く手がける。好きな食べ物は熊本の馬肉、京都のサバ寿司、仙台のずんだもち。憧れの旅人は星野道夫。旅のBGMは奥田民生の「さすらい」~♪

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