恋しいアジア!お腹もまんぷく美味しい食紀行
日本で楽しむ香港とマカオのエッグタルト
タルト型の生地にカスタードの甘い焼き菓子エッグタルト。日本をはじめ、東アジアや東南アジアなどアジア圏で人気のスイーツですね。
中でも、エッグタルトの2大拠点といえるのが、香港とマカオです。同じ中国の特別行政区のご近所都市ですが、食べられているエッグタルトは違うタイプのものなのです。
日本でも近年、特に香港のレトロカフェスタイルの「茶餐廳(チャーチャンテン)といわれる店が続々オープンしていて、気がるにエッグタルトが食べられるようになりました。
今回は、香港とマカオのエッグタルトの違いや日本で食べられるエッグタルトの店をご紹介します。
クッキー生地の香港式エッグタルト
香港で主流となっているのが、しっとりタイプのクッキー生地で仕上げたエッグタルトです。カスタードクリームを、焼き色をつけずに焼き上げるのが特徴で、広東料理の点心デザートとしても不動の人気があります。
店によってはパイ生地タイプもあるのですが、やはり焼き色はつきません。バターではなく、ラードを生地に練り込むので、しっとりと仕上がります。
2022年9月に東京・表参道にオープンして話題となっているのが、香港スイーツの魅力がたっぷりつまったテイクアウト専門店「JOY LUCK TEA HOUSE」です。
明治通りと接する表参道の交差点すぐの路地裏にあり、店内の壁には大きく香港の街の様子が描かれていて、フォトスポットとしても映える場所です。
この店は、「豪華餅店」のエッグタルトや「金記冰室」のパイナップルパンなど、現地の名店からピックアップされた名物メニューが提供されていて、香港ファンからも期待されている店なのです。
甘さ控えめのエッグタルトは、カスタードになじむしっとりとしたクッキー生地でホロリと崩れてしまうくらい柔らかです。同店ではバターを生地に使用して芳醇な香りを漂わせています。まるでプリンのようなカスタードが滑らかな食感で、同じく名物のコンデンスミルク入りの香港ミルクティーにも合います。
抹茶味のエッグタルトも提供されていて、こちらは日本限定です。現地では食べられないエッグタルトもぜひチェックしてみてくださいね。
ところで、同店のオープンと同じ頃のタイミングで、実はエッグタルトのモデルとなった「豪華餅店」が閉店するというニュースが飛び込んできて、香港ファンをざわつかせました。コロナ禍もあって、香港では多くの名店が廃業しているので、モヤモヤしていたのですが、お店のパン職人さんによって復活させるとのことで安心しました。
香港に行く機会があったら、ぜひお店にも行ってみてくださいね。
- JOY LUCK TEA HOUSE(ジョイラックティーハウス)
東京都渋谷区神宮前6-6-6 TSビル1階
03-6427-2684
11:00~20:00
エッグタルトは280円~
ホームページ
パイ生地のエッグタルトは「ポルトガル式」
クッキー生地の香港式に対して、マカオはパイ生地で作られた焼き目がしっかりついたタイプのエッグタルトです。バターたっぷりのサクサク生地に、卵の黄身の濃厚さが際立つカスタードクリームがたまりません。
こちら「マカオ式」といわれることもあるのですが、正確には「ポルトガル式」です。というのも、かつてマカオはポルトガルの影響下にあったことから、ポルトガル発祥のパイ生地が主流になりました。
マカオでエッグタルトを食べるならば、観光客が必ず訪れるという「Lord Stow’s Bakery」が有名です。一日に2000個が売れるというエッグタルトの名店で、本店がマカオの南部コロアンエリアにあります。
「Lord Stow’s Bakery」と聞くとわからないかもしれませんが、「アンドリューのエッグタルト」と聞くと、「あ~あの店!」とピンとくる人がいるかもしれませんね。
実は、1999年にマカオから日本に「アンドリューのエッグタルト」という名前で上陸しているのです。以前は東京にもありましたが、今は大阪を中心に関西圏で複数店舗があります。
大阪・道頓堀にある本店はテイクアウト専門店。小さな店ながらも次から次へと買い求める客が絶えません。
サクサクのパイ生地に卵の風味が広がって、見事なエッグタルトに驚くでしょう。焼き目のアクセントもこれまた美味。オリジナルタイプのエッグタルトの他に、ビターな味わいのショラやシナモンの効いたリンゴ、季節限定で登場するフレーバーなど7種類ほどが並びます。
- アンドリューのエッグタルト
大阪府大阪市中央区道頓堀1-10-6
06-6214-3699
11:00~21:00
エッグタルトは270円~
ホームページ
マカオ贔屓な私は、ついついパイ生地を好んで食べてしまいますが、同店では冷凍での全国配送も可能です。クッキー生地のエッグタルトならば、ぜひお店の雰囲気抜群な「JOY LUCK TEA HOUSE」で。手土産としてもおすすめです。
機会があったら、ぜひ食べ比べをしてみてくださいね。
プロフィール
伊能すみ子
アジアンフードディレクター/1級フードアナリストアジア料理を得意とし、旅をしながら食の楽しさを探究。メディアを中心にアジア食品の提案、店舗リサーチ、食文化コラム執筆など幅広く活動。また、ごはん比較探求ユニット「アジアごはんズ」では、シンガポール担当として、東南アジア4カ国の食べ比べイベントを不定期で開催している。