エッセイ

恋しいアジア!お腹もまんぷく美味しい食紀行

マカオで出会った広東式「粥」

白ごはんは炊きたてを食べる以外にも、炊き込みご飯やチャーハンにするなど、調理法、食べ方(調理法)は様々。では、「粥」となるとどうでしょう。風邪をひいた時や体調不良の時に食べるイメージではないでしょうか。自炊して食べるか、外食するかによって違いはありますが、同じ米食文化の中国、香港やマカオの国や地域、東南アジアなど、広い地域で粥は日常的に食べられていて、粥専門店も多くあります。

実は近年、首都圏では広東レストラン、カフェのメニューに粥が登場したり、専門店もオープンしたりして注目されています。気軽に海外に行くことのできない現在ですが、、私が訪れたマカオの様子を旅気分で楽しんでみましょう。

「粥」とは?

そもそも粥は食べたこともあるし、知っているつもりでいましたが、「調理方法やどんな料理なのか」となると、意外に曖昧な答えしかできないかもしれません。まずは、日本で一般的な粥とは?

【白粥】普通のご飯より水分を多くして炊いた柔らかいご飯のこと。水加減により、七分粥(米1に対して水7の割合)、五分粥(米1に対して水10の割合)、三分粥(米1に対して水15~18の割合)などの粥が出来上がる。
『和食の用語辞典』(旭屋出版)「ご飯物の用語」から抜粋。

とありました。米を水からゆっくり時間をかけて炊くのが一般的で、野菜や卵など具材を入れる場合もありますが、味付けは塩程度です。近年は炊飯器に「粥炊き」機能がついている商品もあるので、活用してみると手軽に粥が自宅で楽しめます。

マカオの粥はモツ粥がうまい!

日本の粥はごはんと同様に具材も体に負担のない優しいものが多いように思いますが、粥を頻繁に食べている国では具のバリエーションが豊富で、食事としてしっかり食べられています。まずは、マカオの粥店をのぞいてみましょう。24時間で楽しめる店もあれば、早朝~午前中で閉まってしまう店など、粥のある日常がそこにはありました。

店頭や入り口すぐにはキッチンがあって、そこで注文ごとに粥を仕上げていくスタイルです。店の奥には厨房があり、仕込みや調理などをしています。専門店であれば粥のメニューは20種類以上、レストランでも5種類程度は揃っています。

人気の「及第粥(カプタイチョッ)」(日本円で約420円)。及第とは、「臓物入り」という意味です。お好みで白コショウをかけて食べるのが地元流です。

マカオや香港の人たちはスープを日常欠かさず飲んでいます。なので、スープの命でもある出汁を取るのがとても上手。トロトロに煮込んだ米粒にも貝柱や魚の出汁が染みわたっています。使用する海産物自体の質も良いものです。だからでしょうか、街なかの小規模の店舗でもレストラン並みの味わいでレベルが高いのです。

粥の具材は、赤身肉や内臓系、魚介と豊富。人気があるのは肉団子やモツ、レバーの粥です。具材がゴロゴロと入っているので食べ応えがあり、意外に腹持ちが良いのです。見た目はヘビーそうですが、具材にもしっかりと下味がついていて、独特な臭みもありません。

朝食の時間には、早々に粥をかきこみ出勤する人、のんびり新聞を読みながら食事する人、夜には、ビールと粥で一日の疲れを取る人や家族連れ、若い人たちもよく訪れます。路上の一角を利用して朝だけの営業をする店もあり、とても賑やかです。店内で食事をしていると、どの店でも粥をテイクアウトする人が頻繁に訪れるのも驚きの光景でした。家族全員分を買う人、オフィスで食べる人など様々で、本当に粥が身近な存在なのだということがわかりました。

日本で広東式粥を食べよう

出汁が染みこんだ広東式の粥は、続々オープンしている広東レストランや香港カフェなどで楽しむことができます。

プロフィール

伊能すみ子

アジアンフードディレクター/1級フードアナリストアジア料理を得意とし、旅をしながら食の楽しさを探究。メディアを中心にアジア食品の提案、店舗リサーチ、食文化コラム執筆など幅広く活動。また、ごはん比較探求ユニット「アジアごはんズ」では、シンガポール担当として、東南アジア4カ国の食べ比べイベントを不定期で開催している。

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