エッセイ

恋しいアジア!お腹もまんぷく美味しい食紀行

秘湯NO.1の「高湯温泉」と白河ラーメン

日本には様々な温泉がありますね。私にとって思い出の地といえば、熱海や草津など歓楽街にある温泉地です。あれから十数年、新たに訪れたのは今まで体感したことのない喧噪もネオンもない秘湯の地、福島県高湯温泉でした。

昨年末、観光に関する調査・研究、地域復興機関「じゃらんリサーチセンター」が行ったアンケートで高湯温泉は『全国温泉地満足度ランキング秘湯部門 第一位』に選出されました。観光客集客のために施設のリニューアルや商業施設を増やす観光地が多い中、この一帯はまるで時が止まったような、ある意味とても神秘的な雰囲気の場所です。それもそのはず、約400年もの間その景観はほとんど変わることなく今に至ります。聞けば、音楽や祭りの鳴り物を禁止することで雑音を消し去り、山から続く道路も当時の地図の配置とほとんど変わっていないことに驚きでした。

高湯温泉の特徴は白濁の硫黄泉。そのすべてが“100%源泉かけ流し”です。高湯温泉観光協会は、2010年に「源泉かけ流し宣言」を発表していて、これは東北初の快挙だそうです。今回、特別に関係者以外立ち入り禁止の源泉路を見学させていただきました。

ここから各旅館に均等に源泉が分配されていくそうです。現時点で湯は透明だけど、流れ広がることで湯花が混ざり、乳白色にかわっていくとのこと。一週間で1cmの湯花がたまるので、掃除も大変そう。幻想的な雪景色に、赤松の木で作った源泉路が遠くまで続いていく様子は、400年前にタイムスリップしたような気分です。

今回、宿泊した「吾妻屋」の露天風呂では、美しい朝焼けを独り占め。湯に浸かった体は、じんわりと血流が動き出し、毒素が排出されたような心も体も軽くなったように感じました。至福のひと時です。

滞在中は、いくつかの旅館を訪ねたのですが、この源泉がそれぞれの旅館に流れることで、別々の旅館なのにひとつの大きな一軒家にいるような、不思議な気持ちになりました。旅館の方々のこの地を守り続けている想いも聞けたので、よけいにそう感じたのかもしれません。

おっと、忘れるところでした。私の使命は“美味しい食紀行”。高湯温泉に行く前に、福島県のラーメン処である白河市に立ち寄り、名物の白河ラーメンを食べてきました。ここ数年は日本以外の麺ばかりを食べていたので、久々の純和風ラーメンにテンションが上がります。

訪れたのは「手打ち中華 すずき」。しょうゆ味の手打ちチャーシューメンです。溢れんばかりの透き通ったスープにボリュームたっぷりの麺が美しい!縮れた平打ちの太麺にスモーキーなモモ肉のチャーシュー、さらにツルンとした食感の雲吞も抜群です。スッキリした味わいなので、量が多くても食べやすい。店内をみても、小さなお子さんから年配の方まで幅広い層の方が訪れていました。行列ができるだけある名店です。

東京にいると、華やかなことばかり追いかけてしまいがちですが、立ち止まってその時の流れに身を任せることも必要なのかもしれません。心の洗濯完了です。

プロフィール

伊能すみ子

アジアンフードディレクター/1級フードアナリストアジア料理を得意とし、旅をしながら食の楽しさを探究。メディアを中心にアジア食品の提案、店舗リサーチ、食文化コラム執筆など幅広く活動。また、ごはん比較探求ユニット「アジアごはんズ」では、シンガポール担当として、東南アジア4カ国の食べ比べイベントを不定期で開催している。

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