台所から旬だより
土用の丑の日になに食べる?
もうすぐ土用の丑の日。「土用の丑の日にはうなぎを食べる」というのは、発明家でもあり薬学・博物学者でもあるかの有名な平賀源内先生が生み出した「キャッチコピー」であるということはよく知られたお話。
そもそも「土用の丑の日」とは、薬膳と関係が深い「五行説」からきています。 五行とは、世の中のありとあらゆるものを5つの要素(木・火・土・金・水)に分類するという考え方のことで、「季節」を五行に分類するとこうなります。 木は春、火は夏、土は土用、金は秋、水は冬。「春夏秋冬はわかるけど土用って…」と思われたのでは?
土用とは「立春」「立夏」「立秋」「立冬」前の約 18 日間のこと。「夏の土用」という言葉は聞いたことがあっても「秋の土用」ってあまり耳にしませんよね。でも、「土用」は季節ごとにあるものなのですよ。「丑の日」とは「子・丑・寅…」といった「干支」を日にちに割り当てたもので、「土用の丑の日」とは「土用の期間に巡ってくる丑の日」ということなのです。
この「土用」の時期はいわゆる「季節の変わり目」にあたります。季節の変わり目は体調を崩しやすい方が多いようですが、みなさんはいかがでしょうか。昔から「土用」の時期は「体調面、精神面、そして運気も乱れやすい」とされ、その中でも「夏の土用」は最も注意が必要と言われています。そんな心身絶不調の時に「栄養満点のうなぎを食べよう!」なんて言われると、ついつい「うなぎを食べねばっ!」という気持ちにもなりますよね。平賀源内先生、さすがです。
そんなこんなで「うなぎと言えば夏」といった印象が強いのですが、うなぎの「旬」って 本当に「夏」なのでしょうか? いえいえ、実はうなぎの「旬」は「秋~冬」なのです。とはいえ、これは「天然うなぎ」の話。一般的に出回っている「養殖うなぎ」には「旬はない」と考えるのが順当のようです。
「旬の食べ物を食べることが大事」と考える「薬膳」を実践する身としては、うなぎの「旬」 がいつなのかということはとても重要なことだったのですが「なーんだ」という結果に。
ところで、みなさんは「うなぎの漁獲量が激減している」というニュースを聞いたことはありませんか。 私も数年前から心配していたのですが、ついに今年、うなぎが「絶滅危惧種」に認定されてしまいました。 そんな話を聞くと「土用の丑の日には絶対うなぎを食べなくちゃ!」とは積極的に思えなくて…
一説によると、土用の丑の日には「うなぎ」だけでなく、「う」のつく食べ物を食べると夏バテしないとか。わが家では昨年からこの説を採用し、うなぎ以外の「う」のつく食べ物を食べています。「う」のつく食べ物といえば、「梅干し」「瓜」「うどん」などがありますが、確かに「梅干し」や「瓜」は薬膳的にも夏バテ対策に効果的な「旬」の食べ物!「丑の日にはうなぎ」という文化は捨てがたいものですが、大事な水産資源であるうなぎ を守るためにも、うなぎ以外の「う」のつく食べ物を食べるという説を取り入れてみるのもよいかもしれませんね!
プロフィール
高倉知子
薬膳GOHAN主宰 薬膳料理講師/東洋運命学鑑定師。2006年に国際中医師に師事。2008年に中医薬膳営養師の資格を取得。マンツーマン料理レッスン「薬膳GOHAN(旧:楽しく薬膳)」を主宰し、カウンセリングによる薬膳アドバイス、マンツーマン&少人数制の出張レッスン、薬膳料理代行、薬膳イベントやセミナー講師、レシピ提供やエッセイ寄稿など、心と体、暮らしを整えるための薬膳料理講師として 幅広く活動中。 また、陰陽五行説で薬膳とつながっている九星気学を扱う東洋運命学の鑑定師に師事。2014年より九星気学をベースとした東洋運命学のカウンセリングや講座なども行っている。