エッセイ

春夏秋冬「ゆる伊豆」だより

伊豆産のハチミツ

ミツバチの減少が世界的な問題となっている昨今。日本国内で販売されているハチミツのほとんどが海外産で、国産の割合は10%にも満たないのだそうだ。だが、伊豆ではその業界がちょっと面白いことになっていた。
数こそ少ないが、養蜂家がていねいに採取し、安心・安全にこだわった「伊豆産ハチミツ」の販売店がある。また、土産物の売店や飲食店の物販棚で「伊豆産ハチミツ」が販売されていたりする。若者向けのオシャレなパッケージになっている商品もあり、売れ行きは上々のようだ。
ブームとは言い難いが、これは新しい形の「伊豆ブランド」の黎明ではないかと密かに思っている。

先日、地元の若者が経営している、伊豆産天然ハチミツの販売会社「イロハブリック」を取材する機会があった。
こちらで販売されているハチミツは3種類のみ。料理やドリンク類に使うと抜群のアシスト能力を発揮し、そのまま食べると、口の中に上品な甘さと芳醇な香りが広がる。安い大容量の外国産百花蜜ばかり使っていた私にとって、それはもう、衝撃的な美味しさだった。
「うちの養蜂園は、伊豆半島沿岸部付近の山や海岸沿いに咲く花が蜜源なんです。空中からの農薬散布もなく、蜜源も豊富で、人工的な騒音も少ないので、ミツバチにストレスや負荷がかかりません。この道50年の養蜂家さんの見解では、潮風に吹かれることによって、ミツバチの体力が向上するようですよ」
いくつもの火山群から構成されている伊豆半島の特殊な地質や風土も、クオリティの高いハチミツが出来上がる条件のひとつのようだ。

まさに「伊豆半島ジオパーク」が生んだ奇跡の蜜、である。

多くの栄養素を含んだ純粋ハチミツは、食用だけでなく、パックがわりに顔に塗ったり、石鹸に少量混ぜて洗顔したりしてもいいのだそうだ。保湿力が高く、肌がスベスベになるらしい。加えて、花粉症の症状緩和効果も期待されている。ずいぶん昔、「純粋ハチミツを綿棒で鼻の奥や目尻に塗るといい」と知人に勧められたが、臆病な私は未だ実行できていない。
「食べるだけでも花粉症対策の効果が期待できる」という噂を信じ(騙されたと思って)、今シーズンは伊豆産の純粋ハチミツを毎日、朝・昼・晩と欠かさず食べているのだが、効果が出ているのかわからない。果たして、「伊豆ジオパーク」が育んだミツバチくんたちの恩恵にあずかれるのか? 乞うご期待!?

プロフィール

小林ノリコ

伊豆在住フリーランス・ライター/伊豆グルメ研究家。東京の編集プロダクション勤務を経て、2005年から地元伊豆でフリーランス・ライターとしてのキャリアをスタート。2014年より静岡県熱海市を拠点に移して活動中です。47エッセイでは、四季折々の伊豆(たまに箱根)の風景や食を中心に、あまり観光ガイドに載らないようなテーマを、ゆる~くご紹介していきます。

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