エッセイ

五感で感じるエッセイ『イン・ラケ'ッチ!』

小さな魔法使いに招かれて―ラトビア共和国

何気ない小さな出会いが、人生を変えてしまう時さえある。それは、偶然じゃなく、きっと、誰かがかけた小さな魔法なのだ。今日のその出会いが新しい未来の始まりかもしれない。

ふと立ち寄った街角のお店。店内いっぱいにカラフルなハンドメイドのクラフト製品(ミトン手袋、靴下、陶器)が並ぶ。その中で、私が手にしたのは、地味なリネンの袋。日本風にいえば巾着である。ざっくりとした生地に、模様が一つ、丁寧に刺繍されている。その素朴な佇まいになぜかとても惹かれて、購入した。もともと、アジアのエスニックな雑貨が好きなのだが、そのお店「リガコレクション」は、日本で唯一のラトビア大使館公認のショップだった。

ラトビア共和国。
それは、バルト三国の中心に位置する、古く、そして複雑な歴史を持つ国である。
海を挟んで西に北欧諸国、東はロシアと隣接し、その地理的特徴から貿易の要所として栄えた。豊かな自然に恵まれ、全長500kmに亘る美しい砂浜があり、手つかずの森には野生動物が暮らす。
この美しい国を巡って何度も戦争が起こった。戦いと侵略が繰り返され、あるときはロシア領になり、またあるときはスウェーデン領となった。
観光名所として残るかつての軍事用の砦や城は、ラトビアの過酷な歴史を物語る。

現在ラトビアは、首都リガを含む6つの地区がユネスコ世界遺産に登録されている。
首都リガは、片側が海、もう片側には幾つもの湖、そして、都市の中央にはダウガヴァ川が流れている。バロックやアールヌーボーなどの建造物が数多く現存し、中世の面影を色濃く残す港町である。その美しさは「バルトの貴婦人」とも呼ばれる。
キャンバスに絵の具をぶちまけたような色鮮やかなリガの街並みは、ドキドキするほど心が躍る。

ダウガヴァ川の橋を渡った先には、世界遺産にして、現役バリバリの巨大マーケット、リガ中央市場がある。毎日10万人前後の人が訪れるヨーロッパ最大級の市場だ。元々は、ドイツのツェッペリン飛行船の格納庫として作られた広大なドームを、屋内マーケットとして使い、リガの人々の生活を支えている。
この市場の活気が、リガの街に暮らす人々のエネルギーの源となっている。

厳しい時代を生き抜いてきたラトビアの人々は、家族を大切に思い、自然と向き合い、他国の文化にも理解を示した。何世紀もの間、ラトビア独自の様式をとどめたまま、他国の文化と融合し、独特の文化を育んできた。
丁寧に作られたクラフト製品に、そんな生き方が反映されている。

ラトビアの人々は、歌の民とも呼ばれ、毎年開催される歌と踊りの祭典には、ラトビア全土から何千人もの歌手やダンサーが集まり、ともに祭りを盛り上げる。
困難な時代を経たからこそ、歌い、踊り、作り、生きることを思いっきり楽しんでいるのだ。

私が購入したあの袋の模様は、どうやら、ラトビア神道の文様らしい。文様のひとつひとつに、それぞれ意味があるという。
ラトビア神道は、自然崇拝、多神教など、日本の神道とも共通点が多い。

この模様=文様、いったいどんな意味があるのだろう。どんなメッセージなのだろう。なぜ惹かれたのだろう。知りたければ行くしかないのか、ラトビアへ。
来年の大型連休の行き先は、ラトビアに決まった、かも。
招かれているのか。小さな魔法使いに。

ちょっと、いや、かなりワクワク。

プロフィール

白川ゆり

CASA DE XUX代表/アロマハンドセラピスト/アロマテラピーアドバイザー
2009年~ マヤの聖地を巡るワールドツアーに参加。パレンケや先住民が住むラカンドン村等、数々のマヤの聖地を訪れる。
また、国内外のマヤの儀式において、火と香りで場と人を浄化する「ファイヤーウーマン」を務める。
2011年~ マヤの伝統的な教えを伝えるワークショップを開催。
マヤカレンダーからインスピレーションを得たオリジナルアロマミストシリーズ「ITSUKI」を制作。

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