エッセイ

旅は私の宝箱

そら色はピンク-マケドニア-

朝食後にホテルを出て湖に向かって歩く。するとすぐに目に飛び込んできたのは上空前方のピンク。

”こんなピンク色を見たことが無い…”

と言いたくなるような優しい優しいさくら色。出発まで時間があるのでツアーのお仲間がちらほら湖畔に出ている。

去年10月、バルカン半島の3か国巡りの旅をした。モンテネグロ、アルバニア、そして最終日はここマケドニアの湖畔のホテルに宿泊。前日のアルバニアでのランチ時の会話を思い出す。

「今日、これから向かうマケドニアのオフリド湖は素敵らしいらしいわよ。ホテルはレイクサイドで…。女一人で滞在するような所では無いらしい。」という私に、「どうしてですか?」と隣に座っていた30才位の女性が怪訝な顔をする。「とてもロマンチックな場所でアベック向きらしい。」「それはあ…うふふふ…。」と隣とその隣の女性が笑う。

この会話の時のテーブルには、私とあと4人が座っていた。1人は男性だが皆一人参加。このツアーには他にも2人、女性の一人参加がいる。

”これだけお一人様がいるのなら怖くない!”

けれど、あれは早朝だったせいかしら? 素敵なパートナーと見たかった空というよりは、ただただ、

”この広がる朝焼けにこの身体を委ねたい!”

という気持ちになるような美しさだった。私の心には、心優しい大きな自然に見守られているという安堵感が満ちていた。旅行の最終日はいつも少しセンチになるけれど、この時は微笑しながら何も言わない女神に見送られてのマケドニアでの1日になった。

ホテルからバスで町の中心部迄行き観光をした。オブリド湖はとても大きく、レイクサイドというより雰囲気的にはシーサイドという方がピッタリとくる明るさがある。マケドニアは観光国としてはさほど有名ではない。北のロシアから太陽を求めてしばらく滞在する人が多いという。急ぎ足の、私達観光客が歩く町の中心部にはレストランやショップが並ぶ。レイクサイドにはテーブルと椅子があり、滞在者が思い思いの時を過ごしている。

男性4人がテーブルを囲みボードゲームに興じている。その中の1人がダイスを振っている。「ビデオを撮って良い?」の英語での問い掛けに「ああ良いとも、どうぞ。」と気さくに答えてくれる。その右奥のテーブルには白人女性が座り、ノートパソコンを観ている。彼女が立ち上がった時に目が合った。「HAI!」と挨拶すると微笑みながら「HAI!」と返してくれた。

高台の絶景スポットに向かって坂を登る途中で、今度は薪割りをしている男性に遭遇。なかなか目にする事が無い光景なのでこちらもビデオ撮影。陽気が良いとはいえ季節は10月。迎え来る寒い冬に備えての準備だろう。

観光スポットに向かう途中の少し嬉しくなるような散策だった。

マケドニアを、昼間は天使が見守っている。

プロフィール

古野直子

横浜生まれ横浜育ち。結婚後10年以上夫の転勤で愛知県豊田市に居住。2011年に横浜に戻る。趣味は旅行。これまでの旅で印象深いのは、岡山の大原美術館、海外ではスペイン、ロシア。

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