エッセイ

旅は私の宝箱

仕方がないから飲むんです―香川県―

「香川に行きたいな~。車で瀬戸大橋を渡って行ってあちらでうどんを食べる。行こうよ。」と夫が言うと「Ⅰ人でどうぞ。」と私のつれない返事。香川県は横浜から遠いしその提案にはあまり興味が無いんだなぁー。何かを食べに何処かに行くというのは私の考え方でいうとNG!何処かに行ってその土地の郷土料理や名産の食べ物を食す。これが正しい順番。これがマイルールなんです。けれどあの話を聞いた時、このルールを破りたくなるほど心をかきたてられたのです。日本全国どこでも食べることが出来るあの食べ物に……。

去年のことです。営業マンのUさんが我が家に来ました。「この前、Mに会いに香川県に行ってきました。」Mさんは、Uさんの前の我が家の担当者。四国の香川県に横浜から転勤になり、業務をUさんに引継ぎました。共に男性です。UさんとMさんは仲が良い。「いやあ、Mはさらに太っていました。」Mさんは少しぽてっとしています。「香川県はやはりうどんがうまいです。」Uさんがうどん好きなのは、以前から何となく私も感じていました。というのも以前Uさんが、お昼ご飯を我が家の近くの香川うどん店で食べてから来た事がありました。その店に行った事が無い私は感想を彼に聞きました。「つゆの味が濃いですね。」その答えに、”Uさんはうどんにうるさい”という印象を受けたのです。そのUさんに香川県のうどんはおだしがおいしいのかあるいはうどんかというような質問をしたと思います。おだしの味、うどんの歯ごたえ共に加減が良いようです。値段は安くはないとのこと。「うどんを食べた後、Mが観光をしようと言うと思ったから、僕はまたうどんを食べたい。」と言ったんです。「うどんはもう食っただろ。観光に行こうよ。」とMが言うのですが「いやうどんを食べる!」と言ってまた食べました。とまあここ迄は、香川はうどんがおいしい、Uさんはうどんが好きという話なのですが気になるのはこの先です。

「あちらは飲んだ後の締めがカレーうどんなんですよ。おもいなぁーと思ったんですがイケちゃうんですよ。」お酒を少々嗜む私には想像がつきます。飲んだり食べたりしたあとに汁物のうどんがつるーっと身体を通る感じが。食べたあと胃にももたれない穏やかな満腹感。昔カレーうどんを作ったことがあるけれど残念ながら失敗しました。うどんの上にかけるあんが難しかった。とろみを付ける片栗粉の分量の加減がポイントでした。今ではもっぱらゆでたうどんにつゆをかけてカレーラーイスを頂いた後の残ったカレーを掛ける。これが我が家のカレーうどんです。これも寒い冬などおいしいのですが。

かくいう締めのカレーうどんには心惹かれます。どんな味わいか?おだしやうどんはお店によっても違うでしょう。他の地域で飲んだ後にカレーうどんを食べてもそれは違うと思います。やはり本場香川県で体験しなくては。うどんのつゆとスパイシーなカレーの、コラボした香りに包まれながら弾力のあるうどんを唇をすぼめてすぽっと吸う。とろみのあるアツアツのたれのはねに注意しながら……。一緒に白いご飯を食べてしまいそう。合うんですよね。この組み合わせ。

Mさんが太ってしまったのはうどんのせいかしら?いやうどんというより、締めのカレーうどんを食べる為にお酒を飲まないといけないから?はたまたカレーうどんと一緒に白米を食べるから?それ故カロリーを摂り過ぎるのかな?そんな事を考えているともう順番なんてどうでも良くなってしまった。そこにおいしい食べ物、お酒がある限り。そしてここにまた私のルールが1つ。香川のカレーうどんは、食前酒が無いと成立しない!

プロフィール

古野直子

横浜生まれ横浜育ち。結婚後10年以上夫の転勤で愛知県豊田市に居住。2011年に横浜に戻る。趣味は旅行。これまでの旅で印象深いのは、岡山の大原美術館、海外ではスペイン、ロシア。

写真
このシリーズの一覧へ
エッセイをすべて見る
47PRとは
47PRサービス内容