エッセイ

世界の地元メシ

東海岸でベーグル 米粉のベーグル

今年になってから、自分が小麦粉アレルギーであることを知り、一気に食の事情が変わったことは、以前にお伝えしたとおりだと思う。まあ、知ったこっちゃ無いとは思うが。

それで、やっぱりレストランなんかに行くと、いろいろと肩身が狭いわけですよ。イタリアンに行けば、そこにはグリッシーニとパスタとピザとフォカッチャという小麦粉四天王が待ちかまえているわけで、しかも、それがないと全然楽しくないわけで。

金払って食べてるのに「ごめんなさい、イタリアンに来ておいて小麦粉アレルギーとか。すみません」と平身低頭にしていなければならないのですよ。町にも米粉パンはそんなに置いていないから、お店の人も対応しようがないんだよね。

でもそんな中、アレルギーにやさしいお店というのもありまして。米粉でパン生地を作ってパンやピザを焼いてくれたり、キヌアでパスタ作ってくれたり、玄米でグリッシーニ焼いてくれたりとかする、小麦にかわいそうな人に寄り添ってくれるところもあるわけです。

それで、その中で玄米で作った丸っこいパンを食べている時、突然、東海岸で食べたベーグルのことを思い出した。マイアミの話なんだけど、南米に行くまえにマイアミも寄っておくかと思い、西海岸からマイアミに降り立ち、空港からのリムジンを探していたところ、2人組の若いポリスが脇道でなんか食べていたのね。

リムジンのバス停の場所をたずねようと近寄ったら、彼らがランチとして食べてるのはおにぎりだった。

「ヘイ、カッコいいお兄ちゃん。リムジンバスの乗り場はどこですか?」
「今着いたのかい、お嬢さん」
「うん、そう」
「残念だね、マイアミではリムジンバスは廃止になったんだ」
「そんなわけあるか!」
「いや、本当なんだ。だから歩いていくしかない」
「嘘つけ、バス停教えろ」
「廃止になったんだよお(笑)ちなみに町まで60キロあるけど」
「干からびるわ」

というマイアミ漫才をしながら、晩御飯はどこがうまいか、危ないとこどこよ、とかの立ち話をしていた。で、「おにぎりって、日本の食べ物なんだよ」って教えたら、すごいびっくりしていた。

彼らが買ったおにぎりは、マイアミ市内の小さな食品店で、イケてるアフリカ系アメリカ人の婆ちゃんが作ってるものなのだそうだ。(それにしてもつまらないことしてくれたよね。こんなん、黒人のイケてる婆ちゃんって言ったほうが、断然ファンキーさが伝わるってのに………)

面白いからその婆ちゃんを見てこようと思って、その店に行ってみたら、おにぎりだけではなく、韓国のキンパ・中国のちまき・ベトナムの春巻き類・ロシアのピロシキ・トルコのピタパンサンド・エジプトのアエーシサンド、そしてベーグルサンドがあった。

このラインナップの選択眼には何やら不穏なものを感じるが、その婆ちゃんの店は、別にアレルギー対応ってわけじゃないんだけども、トウモロコシ・タピオカ・米類を使ったものにチャレンジしているのだということで、そのベーグルは玄米粉(ブラウンライス)で作ってあると言っていた。

食べてみると、薄いほうじ茶味のベーグルって感じで美味しい。玄米の甘味と米の持つモチモチ感が、確かに、本物のベーグルにかなり近い。そして、米粉だからこそのなめらかさが、強力粉でつくるグルテンよりも、やさしくて繊細なのだ。(こんなん、日本人にしかわからないと思うけど)

「これ、作るの難しいのよ〜」そういって、婆ちゃんが米粉ベーグル開発秘話を話してくれたんだが、残念ながら何一つ覚えちゃいねえ。でも、このベーグルをきっかけに、マイアミにいる間、ベーグルばっかり食べていた。

当時、ベーグルサンドはそんなに種類はなくて、たいていは山盛りのクリームチーズか、てんこ盛りのピーナツバターが挟んであるだけ。気の利いた店だと、そこにかぼちゃのタネとか、ラム酒に漬けたドライイチジクなんかが入ってるのもあったな。ベーグルってのは、いつの間に、今みたいなオシャレな食べ物になったんだろうか。

とまあ、そんな素朴な食べ物なんだけど、一日に何個も食べられる、おにぎりみたいな食べ物だと思った。それで、この記事を書くために米粉のベーグルサンドってのに挑戦してみたんだけど、まあこれが難しいったらありゃしない。

何が難しいって、水分量の調節が難しい。米粉でも発酵はさせるわけですが、普通のパンですらその日の湿度で変わるのに、米粉ときた日にゃ勝手に空気から水分を取り入れてしまうのか、こねてる間に手にくっついて取れなくなるか、焼いたら爆発しているのがほとんど。

婆ちゃんの「これ、作るの難しいのよ〜」の声が脳内で鮮明に再生され、なんか大事なこといってた気がするなと記憶の地引網を引っ張っていたら、部屋の奥から「小麦ふすま」を持ち出してきて、これを入れておくと水分の調整ができるようなことを言っていたのを思い出した。なので、家にあったオートミールが粉末化したもの(オートミールご飯が流行っていた時の残り)を入れたら、なんとなかった。

後でググったらやっぱり小麦ふすまやオートミール、サイリウムパウダーで調整すると良いって一杯出てきたぞ。

でもさ。確かにGoogle検索は役に立つけど、私を助けたのは婆ちゃんがガッサガッサ音を立てて持ってきた小麦ふすまの紙袋を持った映像なので、やっぱり年長者の言うことは適当にでもちゃんと聞いておくと、スマホなんか無くても大丈夫なんだなって思ったよ。

さて、雑なレシピはこんなんです。ベーグル2個分なので、必要な分を増やしてください。

【小麦ふすま入り 米粉ベーグル2個分】

材料

  • 米粉 65~67g
  • コーンスター チ10g
  • 砂糖 10g
  • 塩 1g
  • ドライイースト 1g
  • ふすま的な繊維類 2.5~3g
  • 水 70g
  • サラダ油かオリーブオイル 3.5g
  • それ以外に オイル少々
  1. スタート
    上記のA~Hの材料をボウルに入れて混ぜてまぜる。本当は丁寧に順番に入れるらしいが、私は全部一緒に入れた。1〜2分混ぜて、生地に指突っ込んでもつかなくなったらOK。生地が指に付いたら、ふすま類を少し足してまたこねる。
  2. 適当な発酵1 
    ラップして10分〜20分くらい。夏は10分で良いと思う。たぶん。
  3. こねこね
    手に少しオイルをつけて、手につかずにこねられるようになるまで、油分を少し足しながら、こねこねこねこねする。
  4. 成型 
    生地は先に棒状にして、それを輪っかにして、端っこをつなげる。むずいので、格闘すると思う。なので、この間に、オーブンを200度くらいに温めておく。
  5. 適当な発酵2
    ベーグルの大きさに四角く切ったキッチンシートの上で10分くらいふわっとラップして放置。別に膨らまないので、時間で区切る。その間に、鍋にお湯を500CCほど入れ、ハチミツをスプーン一杯入れて、ふつふつに煮立つようにしておく。
  6. 煮る
    四角いキッチンシートの生ベーグルを、さかさまにしてお湯の中に放り込み、裏表を各20秒ずつ湯がいたら、取り出す。そのままオーブンへ直行して20分焼成。お湯から出して時間が経つと、なぜか焼いたときに爆発しています。
  7. でき上り。

 
もちろん、何のアレルギーもない人は、この米粉を普通の小麦の強力粉でやれば、もっと上手に作れるよ。

サイリウムってのを使うと確かに売ってるものみたいにキレイにできるけど、小麦ふすまの方がマイアミの婆ちゃんの味に近いです。ベーグルと同じくらいの分厚さにしたクリームチーズを挟んで召し上がれ!

プロフィール

ほしのしょうこ

25年ほど雑誌・WEBマガジンなどで記事を書き散らしているフリーライター。 副業でWEBデザイナー崩れもしている。趣味は散歩と仕事。重度の放浪癖があり世界を鞄一つで浪漫飛行していた。現在は頑張って日本に定住中。

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