エッセイ

恋しいアジア!お腹もまんぷく美味しい食紀行

3年ぶりのシンガポールで春節を祝う!

海外に行くことができなかったこの3年間。ついに日本を脱出して、旧暦の正月である春節を祝いにシンガポールへと飛びました。シンガポールは、私がアジアの食を愛するようになった運命の国。まさに恋しいアジア、恋しいシンガポールなのです。

今回は、久しぶりの海外ということで、日本からの渡航を中心にシンガポールの様子をお伝えします。

成田発!初めてのLCC「ZIP AIR」

さて、シンガポールに行くにはどの航空会社にしようかと、ウェブサイトを見比べる日々でしたが、日程や予算などの条件ぴったりな、JAL(日本航空)の子会社ZIP AIR(ジップエア)に決めました。

同社は2018年に設立。LCC(格安航空会社)なので、預け荷物や食事、座席指定など有料な部分が多いのですが、必要なものだけに課金すればよいし、何といっても燃油サーチャージ代が不要というのは、大いに予算節約になりますね。

渡航当日は、ZIP AIRの拠点となる成田空港・ターミナル1へ。金曜日の昼間でしたが、混雑はなく、以前のような賑やかさにはまだ遠い静かな空気が漂っていました。検査場を抜けると、飲食店や物販店の半分ほどがクローズのまま。限られた店、ファストフードやコンビニに人が集中してしまっていて、少し前ならば“密”なんて言われていたでしょう。

初めてのZIP AIRはめちゃくちゃ快適でした。座席モニターはない代わりに、機内はFree Wi-Fi(これがすごい!)なのでスマホもPCも稼働OK。雲の上からチャットもできちゃいます。USB電源やコンセントもあるので充電も完璧です。

皮張りの座席シートは座り心地よく足元も余裕があり、シンガポールまでの約7時間は快適です。初搭乗だったので夕食用に食事を予約しておきました。

路線によって提供メニューが変わるのですが、日本そばやカツ丼、サンドウィッチなど種類も豊富。中でもセレクトした「スパイス香るZIPカレー」は、シンプルな見た目ながら食べればしっかりスパイシーで、じんわりと体が温まりました。LCCは運賃が安い分、物販で収益を補っていることもあり、食べ物、飲み物の持ち込みができない航空会社もあるのですが同社はOK。これは本当にありがたい。

快適な空の旅はワクワク感を高めてくれますね。

シンガポールで祝う春節

機内から出た瞬間、南国のムワッとした湿気が私を出迎えてくれます。到着したチャンギ国際空港はすでに春節の飾りつけがされていてお祝いモード。国民の74%が中国系を占める多民族国家シンガポールは、街中が春節の賑わいになります。中でも特に華やかなのはチャイナタウンです。

メイン通りには、毎年巨大な干支のオブジェが登場。今年は兎年ということで、ウサギのオブジェや春節アイテムが至る所に飾られていて華やかです。毎年、1か月前から準備が始まり、赤を基調とした春節関連の商品が街中に並びます。

春節の縁起物といえば、吉祥と富を表す金柑の木の鉢植えや切り絵細工の伝統品である剪紙や提灯、お年玉袋の紅包など、たくさんあります。他にも衣服や台所用品などを新調して新たな気持ちで春節を迎えることは、日本と共通するところが多いですね。

春節を迎えるにあたり、日本のおせちのように運気や長寿など願いを込めて食べる料理があります。それは、「魚生(ユーシェン)」という刺身サラダです。

魚のユーという中国語の発音は、「余」と同じ発音であることから、「余りがある」や「豊か」というような意味があり、生のシェンという中国語は、「升」と同じ発音で、「上昇」という意味をもつことから縁起のよいとされています。白身魚や大根、人参、ゴマや五香粉といった食材にもそれぞれに意味があり、全部を混ぜて食べることで、金運や仕事運の向上、健康を願うのです。

レストランではテーブルを囲んで、一年の願い事を声に出しながら混ぜる光景が多くみられ、春節の賑やかな風物詩となっています。

この魚生、食材を見ると味がバラバラのように感じるのですが、混ざると味が統一されてとてもおいしいです。日本でも正月にやったらきっと盛り上がりますよ。私は毎年、日本のシンガポールレストランや同じ風習があるマレーシアレストランで魚生を食べています。春節の時期に提供している店もあるので、来年ぜひチェックしてみてくださいね。

インドの収穫祭「ポンガル」

続いてはガラっと変わり、インドのお祭り「ポンガル」を紹介します。シンガポールでは人口の9%がインド系の人たちで、南インドにルーツをもつ人たちが多く住んでいます。

ポンガルはヒンドゥー教の収穫祭のことで、豊作をもたらしてくれる自然に感謝する祭りです。農地を耕したり、乳を提供してくれたりする牛に感謝をささげ、舞踊や牛の装飾、ポンガルの儀式など、4日間に渡りリトルインディア(インド人街)が賑わいます。

タミル語で「沸騰する」を意味するポンガルは、専用の壷でミルク粥を作ります。その際、ミルクが沸騰して吹きこぼれることから、「豊作」や「豊穣」の意味があるのです。先ほどの魚生でも余るほどの富や豊かさを表現していましたが、民族は違っていても願うことは皆同じですね。

ポンガルは、食事系とデザート系のポンガルがあり、スパイスやナッツを入れたり、チャツネやカレーと一緒に食べたりして楽しみます。ミルク粥というと不思議な感じがしますが、ドリアをイメージすると味の想像がつくかもしれません。日本では、南インドレストランで提供されている場合(ごく一部)があります。

久しぶりに訪れたシンガポールは、よく行っていた店が閉店して入れ替わりはありましたが、新しい鉄道路線ができていたり、ビルが新築されていたり、以前と変わらず発展し続けている国でした。

この3年があったからこそ、新たな気持ちで色々な国の素敵な料理に出会っていきたい気持ちが高まりました。みなさんも機会があったら、ぜひシンガポールを訪れてみてくださいね。

プロフィール

伊能すみ子

アジアンフードディレクター/1級フードアナリストアジア料理を得意とし、旅をしながら食の楽しさを探究。メディアを中心にアジア食品の提案、店舗リサーチ、食文化コラム執筆など幅広く活動。また、ごはん比較探求ユニット「アジアごはんズ」では、シンガポール担当として、東南アジア4カ国の食べ比べイベントを不定期で開催している。

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