エッセイ

恋しいアジア!お腹もまんぷく美味しい食紀行

辛くてしびれる中国の鍋料理「火鍋」の流儀!

寒い日が続いていますが、体を温めてくれる鍋料理は毎日食べても飽きないですね。冬の鍋レパートリーは無限で、スーパーマーケットには、水炊きや豆乳鍋など、何十種類もの「鍋の素」が売られています。なかでも、注目されているのが「火鍋」。唐辛子の辛さと山椒のしびれを伴う“麻辣”の刺激がある鍋として知られるようになりました。専門店も多くありますが、火鍋とはどんな料理なのでしょう。

日本で食べる火鍋

火鍋=辛い鍋、と思いがちですが、元々の意味としては、「火で煮た鍋料理」といわれていて、辛さに限らず中国各地に存在します。特に辛さとしびれを伴う四川省の火鍋が有名で、この鍋が台湾や香港、東南アジアにも広まって、日本でも辛みのある火鍋が主流になったと思われます。

実は、15年ほど前にも日本で火鍋ブームがあり、当時は薬膳火鍋として漢方食材や野菜がたっぷり入ったスタイルの店が続々とオープンしたのです。ひとつの鍋に仕切りがあり、同時に2種類のスープを楽しめる火鍋は、麻辣の刺激的なスープと白湯の優しいスープで、今も人気の鍋料理です。

現在、日本で食べられる火鍋といえば、「ガチ中華」といわれる中国人経営者やシェフによる日本人向けにアレンジしていない火鍋です。レストランでも人気のメニューで、専門店も多く、見た目からも汗がでてきそうな火鍋です。このご時世もあり、ひとり火鍋を楽しめる店も増えてきました。

池袋駅の北口に広がる「東京の中華街」といわれるエリア。中国人経営者の店が多く、中国各地の料理店や食材店などが軒を連ねています。そのなかでも人気なのが、火鍋専門店「熊猫火鍋(パンダホットヒナベ)」。パンダをモチーフにしたキャラクターが若者に人気の火鍋店です。

こちらの店では、お好みのスープを1~3種類選び、さらに具材を選ぶ食べ放題スタイルです。

選んだスープは、麻辣、白湯、キノコの3種。辛いスープと辛くないスープをそれぞれ味わうことができます。

牛肉、豚肉、鶏肉、羊肉、野菜類、海鮮類、練り物・臓物、具材の種類も豊富で、人気は火鍋との相性がよい羊肉、ハチノスといった臓物です。

この火鍋の味の要となるのが、パーム油と辣油を練った固形の火鍋の素です。同店では店のキャラクターであるパンダの形になっていて、これをスープに溶かし入れることで、より辛みとスープに深みを出していきます。これで火鍋のスープが完成します。

火鍋でポイントとなるのが、実はタレです。というのも、日本で鍋をやると具材と一緒にスープもいただきますが、火鍋ではスープは飲みません。単に具材に火を通す、もしくは具材に味をつける程度の存在です。そこで重要となるのがタレなのです。

海鮮ベースのタレや胡麻ダレ、香菜(シャンツァイ/パクチー)、小ネギ、など、ずらりと並んだこれらをブレンドして、好みのタレに仕上げていきます。辛い唐辛子や辣油もありますが、人気は胡麻ダレとのことです。

私が注目したのは、2番人気だという、胡麻油ベースのタレ。塩、香菜、刻みニンニクなどがたっぷり入っています。油のしつこい味だと思うかもしれませんがこれがさっぱりしていて、胡麻油の風味が相まって肉や野菜に合うのです。

ここで、おすすめの胡麻油ダレの配合をご紹介します。

  • ごま油4
  • 黒酢1
  • オイスターソース少々
  • 小ネギ少々
  • 香菜少々
  • 刻みニンニク少々
  • 塩少々

このタレは、火鍋としてはもちろん、茹で鶏を和えたり、豆腐にかけたりしても絶品で、我が家でも色々な料理に活用しています。ぜひお試しください。

実は、本場中国でも胡麻油が火鍋に欠かせない存在です。レストランには胡麻油の缶(コーヒー缶サイズ)が置いてあって、そこから好みのタレを作ります。タレに辛みは入れませんし、さらにいえば、火鍋から具材を取る時は、火が対流しているところから具材を取るといいます。これは、スープの対流によって具材から辛みが取れるからなんだとか。

私の友人は中国で火鍋を食べた時に、遠慮がちに鍋の縁の方から具材を取ったら、中国人から「縁の方は唐辛子や辣油が溜まっているから辛いよ」といわれたそうです。笑い話のように聞こえますが、中国人も辛さはほどほどに!がお好みのようです。

締めには、サツマイモのでんぷんから作った麺を食べるのがお決まりとのことでした。

みなさん、火鍋の食べ方おわかりになったでしょうか。流儀があっておもしろいですね。

レストランだけでなく、自宅でも楽しめるように、火鍋の素が各メーカーから発売されているので、ぜひご自宅でも試してみてくださいね。寒い冬にぴったりで、体が温まりますよ。

プロフィール

伊能すみ子

アジアンフードディレクター/1級フードアナリストアジア料理を得意とし、旅をしながら食の楽しさを探究。メディアを中心にアジア食品の提案、店舗リサーチ、食文化コラム執筆など幅広く活動。また、ごはん比較探求ユニット「アジアごはんズ」では、シンガポール担当として、東南アジア4カ国の食べ比べイベントを不定期で開催している。

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