エッセイ

47都道府県 イラストで名所巡り♪

青森県「奥入瀬渓流」 春

34回目は青森県にある「奥入瀬渓流」です。

以前あるヒーリングCDのジャケットに、新緑の木々の間を勢いよく流れるすがすがしい渓流の写真が使われていました。
私はそれを見て、なんて幻想的で素敵な場所なんだろう…とうっとりした気分になりました。

すぐにスマホで検索したところ、それが青森県の「奥入瀬渓流」だとわかりました。

そこで今回は、いつか訪れてみたいこの場所を絵に描くことにしました。
短編小説のような気分で読んで頂けたら嬉しいです。

「女二人旅、奥入瀬渓流でリフレッシュ」(創作小説)

先月久しぶりに会った大学時代からの親友ハナと春に青森へ行こうと決まった。
大学卒業後は二人とも仕事が忙しく中々時間が取れなかったので、久々の旅行だ。

私たちは金曜の午後から休みをとり東北新幹線で青森へ向かった。
渓流沿いのホテルに到着した頃には夕飯の時間になっていた。

ハナと談笑しながら地元でとれた新鮮な川魚やおいしい郷土料理を食べ、その後に川と原生林が見える露天風呂にゆったりつかった。満点の星が空に浮かび、瞬いていた。

私たちは朝早く起き、ガイドさんと一緒にホテルから「奥入瀬渓流」へ向かった。

「奥入瀬渓流」は20万年前の火山活動でつくられた十和田湖から流れ出ている。変化に富んだ地形と、豊かな自然が織りなす絶景から、特別名勝天然記念物として国から保護されている。

ハイキング気分でのんびりゆったり景色を楽しんで歩いた。鳥たちのさえずりは私たちを歓迎してくれているようだった。岩や樹木が折々に点在し、ところどころに小さな滝が見えて躍動感あふれる流れと景観が続いている。

途中で絵を描いている画家さんに出会った。石に当たった水が飛沫をあげ、重なりあい流れていく様子を美しくのびやかに描いていた。画家さんと少しお喋りをした後、ハナと私は渓流の側に座り深呼吸をした。自然との一体感が味わえて、五感全てが癒された。

それぞれ無言のまま、かみしめるように自然を楽しんだ。歩いていた時には気づかなかった、水の流れ、冷たさ、水音、葉が重なり合う音を感じながら、全てが洗い流されるようだった。

うまくいかなかったプレゼンや上司に怒られたあれこれ……思い悩んだ嫌なこと全てが頭から消え去り、新たな気持ちで私らしくがんばってみようと思えた。

ふとハナのほうを見ると、私の視線に気づいた彼女と目が合い、彼女も同じようにリフレッシュされていることがわかり、無言のままうなずきあった。

私たちは目線を空に向け、大きくまた深呼吸した。

プロフィール

本山浩子

東京都出身 イラストレーター 人物のハッピーでキャッチーなタッチと風景の和む優しいドラマを感じるタッチで出版・広告等で、大人から子供向けまで幅広い世代に愛されるイラストを手掛ける。2013年に読売新聞夕刊で毎週「本山浩子の駅前とことこ」で散歩イラストエッセイも連載。
47エッセイでは旅に出たくなるような47都道府県の名所のイラストを楽しく描き綴る。
MH-Alegria

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