エッセイ

世界の地元メシ

イタリアン茶漬け

はじめまして。世界の地元メシです。

こちらでは、私がリュックサック一個で世界を放浪していた時に巡り合った、世界のおうちの味の記憶をお伝えします。

一回目は、イタリア・ローマのパトリスのお家から。パトリスは激しい小津映画ファンで、当時、ほぼ赤毛に近かった私を日本人だとは知らずに小津監督の話をカフェで語ってくれたのがきっかけで友達になりました。

そのパトリスの家に遊びに行ったら、マンマがどうぞーって言いながら、どーんと深めのスープ皿で運んできたのが、これ。

米と同じくらいの大きさの何かが、小さな豆や野菜と一緒にスープに浸かっていて、見た目がイタリアンなお茶漬け。

軽くトマト味がする濃いめなチキンコンソメスープとオリーブオイルの良い香り。このスープに、自家製フォカッチャ、地元の生ハム、地元の無名白ワインで軽食。

粒粒の正体は粒状のパスタで、クスクスよりも大きくて、米粒大くらい。(写真のハムの真ん中にあるのは、100%豚の背脂だけで出来ているハムという恐ろしい食べ物だが、美味)

よーく見ると円形ではないので、スパゲッティを細かく切っているのかな……と思ったら、こういうパスタが存在していた。

フレゴラといい、魚の卵(伊:フレゴラ)に似ているからこの名前がついている。

メーカーによって粒の大きさがイクラ粒~たらこ粒レベルまでとバラバラで、そんなにメジャーなパスタでもないのだそう。(あくまで長いパスタを愛するローマの人たち談ですが)

私がお邪魔したパトリスのおうちでは定番だった。どのくらい定番かというと、ほぼ毎食出るというので、この家では味噌汁に相当するレベルの定番らしい。パトリス曰く

「こんなに食べてんの、うちだけだと思うよ」

だそうな。

このパスタはイタリア人でも好き嫌いがわかれるものらしく、微妙な粒粒感が気持ち悪いっていう人もいる。(そして、そういう人は実際にかなりいた)

作り方の基本は、何らかのスープで軽く煮るだけ。そして、食べる寸前に窓辺から引きちぎってきたバジルと地元の自分好みなオリーブオイルなどを振りかけて完成。

「一番美味しいのは、このパスタとチキンスープだけで食べるやつなんだけど、それだと栄養が偏っちゃうから……」 と、マンマは残念そうに自慢をしてくれた。

後日、その一番美味しいのをごちそうになったのだが、確かに、粒粒パスタの甘みが増し、パスタの角がクッキリ立って食感が良く、なのに、のど越しが稲庭うどんのようにツルツルしていて本当に美味しかった。

あまりにも簡単なので自分でも作った。パスタがふやけるとまた違った美味しさになるので、作り置きができて便利。温めなおす度に穀物・野菜・ハムなどを足していくと味がどんどん良くなり、最後はトマトソースを入れてミネストローネにして完食というサイクル。

日本だと、おそらくクスクスで同じことが出来ると思うので、久しぶりに作ってみようかな。

ちなみに、このパスタを買うためにローマ市内のスーパーのパスタコーナーでフレゴラを言い間違えて「イチゴ(伊:フラゴラ)ください」と言ってしまい、青果コーナーに連れていかれたことがある。

プロフィール

ほしのしょうこ

25年ほど雑誌・WEBマガジンなどで記事を書き散らしているフリーライター。 副業でWEBデザイナー崩れもしている。趣味は散歩と仕事。重度の放浪癖があり世界を鞄一つで浪漫飛行していた。現在は頑張って日本に定住中。

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