エッセイ

春夏秋冬「ゆる伊豆」だより

話題の新・熱海みやげはコレだ!

熱海が観光地として活気と人気を取り戻した「奇跡の復活劇」。ここ数年、さまざまな媒体でそのV字回復が取り上げられて話題になった。

当地を訪れる観光客は右肩上がりで伸び続け、2017年には3年連続で300万人を突破。首都圏からのアクセスが良く、昭和レトロな雰囲気が魅力的だという理由もあって、とくに若い世代の観光客が増えている。

観光で訪れる若者をターゲットに、熱海に出店する事業者が増えた。「熱海プリン」やジェラートなどが新名物としてメディアで取り上げられ、週末になると店の前に大変な行列ができている。 昔から地元で営業を続けている店は、何もせず手をこまねいているわけではない。

2012年に商工会議所が立ち上げた「A-PLUS」というブランドがとても元気だ。

市内の企業や飲食店が熱海らしい魅力ある地元商品を開発し、全国に向けて発信している。

おもな基準は、地元の素材を使い、熱海市内で生産または加工されている商品であること。

もちろん食味の評価も高いものが商品化される。現在の認定数は48事業所86品。その一部が、駅ビル「ラスカ熱海」1Fの同名店舗で販売されている。

「A-PLUS」には和洋菓子や干物、魚介類の加工品が多い。

そのなかでも異色の「鰹節屋が作った即席みそ玉」が「新しい熱海みやげ」として話題になっている。

作ったのは、創業明治22年の老舗「杉本鰹節商店」。この商品は、「伊豆みそ」に杉本鰹節商店の削粉(粉だし)を入れ、南伊豆産の「ふのり」と国産わかめを混ぜ込んである。小さな手鞠のような味噌玉には、熱海の梅をイメージした「お麩」を飾り付けた。その愛らしいビジュアルを店頭で目にしたとたん、思わず「カワイイ!」と笑顔になってしまった。店頭で手に取っているのは、やはり若い女性が多い。

食べ方は超簡単。 味噌玉1個をお椀に入れ、160mlの熱湯を注いで溶かせばできあがり。

パッケージは軽量かつコンパクトで持ち運びしやすい。税込540円という、若者が手を出しやすい価格設定も工夫されている。興味深いのは、この商品を発案したのがお味噌屋さんではなく、鰹節屋さんだというところ。発想の転換がヒット商品を生んだのだろう。

ちなみに杉本鰹節商店は、削らずに眠っている鰹節を店に送付すれば削って返送してくれるというユニークなサービスも行っている。

熱海市と商工会議所が連携して行う個店支援事業「A-biz(エービズ)」の相談件数は年々増加。実績も数多く出している。地元事業者対象のセミナーへの申込みも多く、「熱海で何か新しいことをしたい」という事業者の熱が高まっているようだ。

熱海にはヒット商品を生み出し、ビジネスを加速できる土壌がある。これからも第二第三の新・定番みやげが生まれていくに違いない。奇跡の復活劇は、どうやら「打ち上げ花火」のような現象ではなさそうだ。

プロフィール

小林ノリコ

伊豆在住フリーランス・ライター/伊豆グルメ研究家。東京の編集プロダクション勤務を経て、2005年から地元伊豆でフリーランス・ライターとしてのキャリアをスタート。2014年より静岡県熱海市を拠点に移して活動中です。47エッセイでは、四季折々の伊豆(たまに箱根)の風景や食を中心に、あまり観光ガイドに載らないようなテーマを、ゆる~くご紹介していきます。

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