エッセイ

五感で感じるエッセイ『イン・ラケ'ッチ!』

会いたかった町 ―金沢―

北陸新幹線の座席は、ゆったりと広くて快適だった。

「カーナーザーワー!!」

金沢に来るのは今回が初めてではない。だが、これまでは時間の制約があり、数多ある観光名所のどこにも行ったことがなかった。
ついに、ようやく、やっと。
解き放たれた子犬のように、走り出したい気持ちだ。ワン!

バス乗り場で、一日フリー乗車券を購入。しっかりした厚手の紙に光り輝く金の文字が印刷されている。この何気ない一枚にも金沢のプライドを感じる。
乗り放題でなんとお得な500円。

まずは、金沢の台所と呼ばれる近江町市場に到着。
アーケード商店街の中は、色とりどりの生鮮食品が並び、買い物客でごった返していた。
熱気に押され、私は向かい側にある「黒門小路」というショッピングビルに退散。ここには、金沢の名品が一堂に集まっていた。工芸品もお菓子も、華やかだが派手ではない。京都とも違う、加賀百万石で発展した独自の日本美である。

次に、近未来都市のような21世紀美術館へ。
円形の総ガラス張りの美術館は全方位が正面である。その形状から愛称は”まるぴぃ”。
広い芝生の前庭を通って中に入ると、館内は回廊になっていて、中庭のオブジェを眺めたり、美術関係の書籍を揃えたアートライブラリーに立ち寄ったりできる。このエリアは交流ゾーンといい、入場は無料である(展示会ゾーンは有料)。
廊下に並んだ休憩用の椅子は、おしゃれな和柄のロッキングチェア。ここに座ってゆらゆらしていたら、あっという間に一日が過ぎてしまいそうである。

プールの中を歩く人の姿が見える「スイミング・プール」。
芝生に設置されたチューバ状の筒から様々な声が聞こえる「アリーナのためのクランクフェルト・ナンバー3」など、たびたびメディアで取り上げられた作品がすぐ目の前にあり、興奮する。

続いて、言わずと知れた日本三大庭園の一つ、兼六園へ。
前田家の藩主が何代にも亘って引き継ぎ、180年かけて完成した。
ガウディもびっくりである。

山があり、水の流れがあり、庭園内から町が一望できる。
池に映る木々の姿まで計算されているのか、ため息がでるほど美しい。海外からの観光客もたくさん来ていて、しきりにカメラのシャッターを切っていた。どこを撮っても絵になりそうだ。

日も傾き、本日の最終地点、城下町の面影を色濃く残すひがし茶屋に到着。
雑貨屋やカフェがずらっと軒を連ねているが、同じ色の格子戸が並び、町の景観が統一されていて、町全体が一つの建物のように見える。

ひがし茶屋街個性を競い合い、色取り取りの建物がひしめき、建てては壊し、壊しては建てる。そんな新陳代謝の激しい東京で生まれ育った私は、時間を重ねた町並みを見ると、いつも心がホッとする。

金沢は、海と山に囲まれた中で、古い文化と新しい文化がバランスよく共存している素敵な場所だった。
帰って来たばかりなのに、また行きたい、金沢。
次は雪の兼六園と、武家屋敷跡、忍者寺、尾山神社、金沢海みらい図書館、主計町茶屋街…。

ああ、あと、何回通えばいいのかしら(うっとり)。

プロフィール

白川ゆり

CASA DE XUX代表/アロマハンドセラピスト/アロマテラピーアドバイザー
2009年~ マヤの聖地を巡るワールドツアーに参加。パレンケや先住民が住むラカンドン村等、数々のマヤの聖地を訪れる。
また、国内外のマヤの儀式において、火と香りで場と人を浄化する「ファイヤーウーマン」を務める。
2011年~ マヤの伝統的な教えを伝えるワークショップを開催。
マヤカレンダーからインスピレーションを得たオリジナルアロマミストシリーズ「ITSUKI」を制作。

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