エッセイ

五感で感じるエッセイ『イン・ラケ'ッチ!』

水無月(みなづき)に願いをこめて

1年のちょうど真ん中、6月30日。翌日から今年の後半が始まる折り返しの日。
「夏越の祓(なごしのはらえ)」という神事が神社の境内で執り行われる。
相撲の土俵の輪を垂直に立てたような直径2メートルほどの茅の輪(ちのわ)の中を、作法に則って、左に右に8の字を描きながらくぐる。
それは、この半年間の罪や穢れを祓い、これからの半年間の無病息災を祈る儀式である。

その日に食べる菓子が「水無月(みなづき)」だ。「水無月」はご存じの通り、6月の別名である。

時は室町時代。
洞窟や地下の天然の冷凍庫「氷室(ひむろ)」に保管されていた氷を、旧暦6月1日の「氷の節句」に宮中に献上させ、貴族やその臣下が食べて暑気払いをしたという。
また、氷の溶け具合でその年の豊作凶作を占ったそうだ。

氷が手に入らない庶民は、氷に見立てた菓子を作り、それを食べた。これが、「水無月」である。
「水無月」は氷の代用品であった。だがそこには、本物の氷を凌ぐ、人々の熱い思いがこもっていたに違いない。

現代でも、期間限定で「水無月」が店頭に並ぶ。
それは、白い三角形のういろうの上に小豆をのせた涼しげな菓子である。三角の形は暑気を払う氷を表し、白いういろうは清浄、小豆には魔除けの意味がある。もっちりした食感のういろうと甘さ控えめの小豆は、あっさりとして後味軽く、初夏にぴったりだ。それにしても、この菓子を氷に見立てた人々の想像力には驚く。

「はじめに気持ち(思い)があって、言葉と動きがある」(※)
これは、少女マンガのレジェンド「ガラスの仮面」の主人公が、演じることの本質に触れた時につぶやいた言葉だ。

はじめに、思いがある。そして、その思いには、現実を創りだす「力」がある。私たちは、普段それを忘れている。

月面着陸ロケット、高層ビル、テレビ、携帯電話…、それらが現実のものとなるずっと前に、誰かの、あるいはみんなの「思い」があった。

さて。
今年の新年の「思い」は、いくつ実現しただろうか。

…。

…大丈夫。まだまだこれから。
まずは、神社に行って身を清め、しゃきっとしたところで、今年の第2ラウンドを始めよう。

今年の「思い」。ロト7を当てるぞー!

私の思いは、小さい。

プロフィール

白川ゆり

CASA DE XUX代表/アロマハンドセラピスト/アロマテラピーアドバイザー
2009年~ マヤの聖地を巡るワールドツアーに参加。パレンケや先住民が住むラカンドン村等、数々のマヤの聖地を訪れる。
また、国内外のマヤの儀式において、火と香りで場と人を浄化する「ファイヤーウーマン」を務める。
2011年~ マヤの伝統的な教えを伝えるワークショップを開催。
マヤカレンダーからインスピレーションを得たオリジナルアロマミストシリーズ「ITSUKI」を制作。

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