エッセイ

47都道府県 イラストで名所巡り♪

岩手県「中尊寺金色堂」冬

岩手県といえば、中尊寺金色堂が思い浮かびます。平泉の文化遺産が世界遺産に登録されたのは2011年で、今年で14年を迎えました。
今回は、冬の「中尊寺金色堂」を描きました。金色堂は年中無休で拝観でき、四季ごとにさまざまな表情を見せてくれます。雪景色の中で幻想的に輝くその姿を思い浮かべていただけるような作品になっていれば嬉しいです。

「アルバムの中の金色堂」

母が亡くなって三ヶ月が経つ。あれほど元気だった母が、この世にいないなんて、今でもどこか信じられない。実家には今も母がいて、私は仕事で忙しく会いに行けていないだけ――そんなふうに思ってしまう。

けれど、電車で母に似た背格好の女性を見かけると、突然涙があふれる。現実に引き戻され、母が本当にいなくなったのだという事実が胸に突き刺さるからだ。

母のいない初めての正月。ひとりになった父が心配で、姉と長めに休みを取って実家へ戻った。父は以前より痩せ、どこか小さく見えた。

「大丈夫?」と声をかけると、「早く母さんのいるところに行きたいなぁ」と寂しそうに言う。その言葉に胸が締めつけられた。父の大きく空いた心の穴が癒えるには、まだまだ時間がかかるのだろう。

実家の物置で、姉と母の遺品を整理していると、たくさんのアルバムが出てきた。私たちが生まれる前、父と母が日本中を旅していた頃の写真らしい。北海道、大阪、京都、沖縄、長崎……二人は休みのたびに日本じゅうを巡っていたようだ。

時系列に並べられたアルバムをめくっていくと、ふと手が止まった。岩手県・中尊寺金色堂へ向かう両親の後ろ姿の写真。まるで映画のワンシーンのようで、一瞬で心をつかまれた。写真の横には、ある写真家の名前と、モデル気分を味わったことが楽しかったと書き添えられていた。

「え?あの世界的に有名な写真家?」

姉と私は思わず声を上げた。他にも、その人が撮ったと思われる写真が何枚か貼られている。旅ならではの一期一会とはいえ、なんてすごい偶然だろう。

「中尊寺金色堂、世界遺産になった年に家族でも行ったよね」と私が言うと、
「行った、行った!」と姉が笑う。
「あの時さ、お母さん、キラキラの金色堂の中で『お金が貯まりますように!』って大声でお願いしてたよね」

「そうそう!周りの人たち、みんなこっち見ててさ。私は恥ずかしくて知らない人のふりしたもん。ははは!」

母の笑い話は数えきれないほどある。“武勇伝”と言ってもいい。中尊寺の写真をきっかけに、私たちは次々と母の思い出話を語り合った。

ふと、私たちの会話の輪の中に、母がそっと入ってきたような気がした。


「もう、二人ともよく見てるんだから。いや~ね」

そんなふうに笑っている母の声と姿が、一瞬だけ見えた気がした。母は太陽のように周りを明るく照らす人だった。
アルバムのページをめくるたび、母の笑顔とあたたかい記憶があふれてくる。
家族の太陽だった母は、今も、そしてこれからも、ずっと私の心の中で輝き続けている。

プロフィール

本山浩子

東京都出身 イラストレーター 人物のハッピーでキャッチーなタッチと風景の和む優しいドラマを感じるタッチで出版・広告等で、大人から子供向けまで幅広い世代に愛されるイラストを手掛ける。2013年に読売新聞夕刊で毎週「本山浩子の駅前とことこ」で散歩イラストエッセイも連載。
47エッセイでは旅に出たくなるような47都道府県の名所のイラストを楽しく描き綴る。
公式サイト

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