エッセイ

旅は私の宝箱

いつかあの場所に―ポルトガル―

飛行機の窓から前方下を見るとほわっとした灯りの群れが見える。夜の空の黒さとその優しいオレンジ色はロマンチックなコントラストを成している。

“まるで宝石を散りばめたよう!なんて素敵な所に来てしまったのかしら。”

リスボンの空港に近づいた時私はとても興奮していました。

ポルトガルはヨーロッパ大陸の1番西、イベリア半島スペインのお隣にペタッと位置し面積は北海道位で南北に長いです。ロケーションは最高で大西洋に面しています。2012年の11月にツアーに1人参加しました。ポルトガルのリスボンから観光しながら北上してスペインのあの巡礼の最終地、サンディアゴデコンポステラまで向かい南下してリスボンに戻りました。

このスペインからポルトガルに戻る時、海沿いは走行しなかったけれど青い海をバックにした白い壁の家々を遠くに目にする事が出来ました。あの辺りのポルトガル北部は有名な景勝地というわけではないのでバスは停車しませんでした。美しい景色を車窓から眺めるだけ。通過する時は後ろ髪を引かれる思いでした。

“残念だったなア~!いつかあんな夢のような場所で暮らしてみたい。”

そんな想いが心に芽生えました。自宅に帰ってからストリートビューで見ましたもの。そうしたらあの楽しかった旅行を思い出してせつなくなりました。そしてそのせつなさを抜けて私は妄想にふけりました。

ここに暮らすとなると…、まずは言葉の問題。英語はほとんど通じないだろうな。ポルトガル北部のポルトという街に2泊した時、郊外のショッピングセンターにⅠ人で行った時には英語が通じなく会話で苦労しました。ポルトガル語、せめてスペイン語を勉強しなくちゃ! その次に気になるのは食です。きっとあの辺りは新鮮な魚介類が豊富だろうな。ツアーの昼食で頂いた前菜のムール貝おいしかったなア~! 海水の塩気が調味料という感じのフレッシュな味わいでした。蒸された貝の身がお皿に盛られて供されました。

しかし、野菜は…マズいというより味が無かった。リスボン市内で買った木いちごも同様。物価は安いのだけれど。旅行時は1ユーロ100円位だったから尚のこと安く感じました。添乗員さんの説明によると、農産物は1番質の悪いものがポルトガルに入ってくるそうです。けれど…トマトがアレでは困る。ポルトガルに住んだら冷やしトマトは食せなくなる。けれどそれは我慢 我慢! そしてポルトガルは国土が狭いせいか観光スポットも1つ1つが狭く、観て廻るのが楽です。建築物などもイタリアやスペインのような強い個性を感じません。それがかえって郷愁を誘うのかも。全体的に力が入り過ぎていない。ラフな感じが魅力です。

一見悪く思えるような所が長所にも感じられました。旅行でさあっと駆け抜けましたがもし暫く滞在したら私はやはりポルトガルが好きなのかしら?興味がわきます。

今度ポルトガルを訪れる時は…。あの大西洋に面した海外線沿いを列車で旅したい。事前にホテルの予約をせずに気に入ったところに途中下車して小さめのペンションに泊まりたい。ペンションに入ってもきっと誰もすぐには出ては来ないでしょう。それが良いんです。けれど出迎えに絶対に外せないものがある。それはリスボンの空港に近づいた時、飛行機の窓から見下ろしたほわっとしたオレンジ色の灯り。スペインでも見たオレンジ色ですが入国歓迎の灯は感激もひとしおです。あの”ほわっ”無くしてポルトガルの旅は始まりません。

プロフィール

古野直子

横浜生まれ横浜育ち。結婚後10年以上夫の転勤で愛知県豊田市に居住。2011年に横浜に戻る。趣味は旅行。これまでの旅で印象深いのは、岡山の大原美術館、海外ではスペイン、ロシア。

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