旅は私の宝箱
嬉し恥ずかしLCC

目を覚ますと座席のアーム(ひじ掛け)が上がっていた。離陸時には、アームは定位置にしたつもりだけれど…。
“あれっ?”と思いながらも飛行機は空中を飛んでいる。バティックエアー、マレーシアのLCCの機内での話。
私は通路側の座席。隣は空いていてその隣の窓側には韓国人らしき20代と思しき青年が座っている。通路を挟んで隣にはおっと。
青年は
“空いている席を使って。”
というような素振りをする。
“もしかしてアームを上げたのは彼?”
この流れからそう思える。彼こそコンビニ袋を2つ3つ、自分の座席に置いているのに。
“あなたこそお使いなさい。”
という様にジェスチャーすると笑っていた。
(もう、親切なんだからあー!)
見ず知らずの私への気遣いに気を良くする私。
おっとは通路を隔てて横に居る。
機体が日本の上空にさしかかり、
「下方に富士山が臨めます。」と、英語のアナウンス。機内がざわざわして、窓側の乗客達が写真を撮りだす。
(失敗したな。10時間以上のフライトではないんだから、せめて夫婦どちら側か窓側にすればよかったな。)
私は後悔していた。バシャバシャと、いや、ピッピと写真を撮るお隣の彼。スマホだから。
私はこの時、
(譲ってよー!シャッターチャンスを。そんなに何枚も撮らなくて良いじゃない。)
と少々ムッとしていた。けれど、また少ししてからアナウンスが聞こえる。
「左方後ろに富士山が臨めます」
「マウントフジ?」と言うと彼は「携帯を貸して。」と言う風な様子を見せ、何枚も撮ってくれた。そして先ほど撮った自分の写真を見せてくれる。
【富士山の上からー!!】
(良いなー。なかなか見る事が出来ない、山頂の火口の上からのショット。私のなんて富士山の遠影。その写真シェアして欲しい。)
と思ったけれど、アドレス交換は流石に出来ませんでした。
そしてもう一人、後ろの座席の人にもご親切にして頂いた。年は30前位かな?やはり韓国人に見えるアジア人。私は、マレーシア通貨のリンギットを余らせていた。
(この7リンギットを使いきれないかしら?)
機内のメニューを見ると、コーヒーが10リンギットだった。
「キャッシュで7リンギット払って残りはクレジットカードで払います。」
こうCAに伝えたつもりが、先方はそのように理解していなかった。カードの明細を見ると10リンギットになっている。
「私は3リンギットだけカードで払うつもりだったのよ。全額なんて言ってない!」
とエキサイトする。
ただ、10リンギットって、機内レートで600円なんですが…。
(コーヒーを返そうかしら。)等と考えていると、後ろの座席の男性が
「僕が3リンギット払う。」
と言ってくれた。確か日本語だったと思う。
(日本人なのかしら?)
お言葉に甘えて立て替えてもらった。3リンギットは日本円で180円。夫と私のお財布併せて179円あった。後ろの彼に背もたれ越しに「サンキュー。」と言いながら小銭を渡そうとすると、
「要らないよー。」
という感じの彼。首と手を振っていたのを覚えている。
(トホホ、相済みません。)
身体を元に戻す私。親切にされて恥ずかしい。
ほんの600円位の大騒ぎは、少々みっともなかった。
この後帰国してからも、機内での若い男性の優しさが嬉しくて気持ちが晴れやかだったのだけれどふと思う。
あの優しさは年寄りへの労り?
そう思うと気持ちはブルー。
韓流スター好きの友人にメールをした。
[多分韓国人だと思うけれど、若い男性が飛行機の中でとても親切だった。あれってさー、老人を敬っての事かしら? 韓国人って目上の人に敬意を払うじゃない。]
友人の返信は
[韓国人は、女性に対して優しいらしいわよ。]
中学時代のクラブ仲間の彼女。
同世代の同性の優しさに改めて感謝!
(※本記事の写真は、記事内で撮影されたものとは別のイメージ写真です)
プロフィール
古野直子
横浜生まれ横浜育ち。結婚後10年以上夫の転勤で愛知県豊田市に居住。2011年に横浜に戻る。趣味は旅行。これまでの旅で印象深いのは、岡山の大原美術館、海外ではスペイン、ロシア。
