エッセイ

47都道府県 イラストで名所巡り♪

三重県「丸山千枚田」春

38回目はいつか行きたい三重県『丸山千枚田』を描きました。

春は今まで桜の見える名所を描いてきました。今回は四季により異なる風情が楽しめる春の「丸山千枚田」を選びました。

今回も想像の物語を作り、その主人公に「丸山千枚田」に出かけてもらいました。
短編小説のような気分で読んで頂けたら嬉しいです。

「パワーチャージの旅へ」(創作小説)

私は食品メーカーに勤めて25年になる。会社では広報部に所属し、支社向けの社内報の編集も任されている。社内報の仕事では全国にある支社へ取材に行くのが恒例だった。コロナ禍でそれができなくなった為リモートで取材し、資料や写真はメールで送ってもらっていた。

コロナが明けてようやく出張が再開されることになり、三重支社に行くことになった。たまの出張は気分転換にもなるので嬉しい。木曜の仕事帰りに新幹線に乗り、支社近くのホテルに泊まった。金曜の朝から支社へ向かい終日取材や打ち合わせをこなし、仕事が終わった後は三重支社にいる仲良しの同期のアサコと夕飯を食べ、彼女の家に泊まらせてもらった。出張を終えてすっきり充実した気分で週末はアサコと一緒に三重を巡ることにした。

土曜は早起きをしてパワースポットの伊勢神宮でお参りし、恋愛成就を願った。周辺をゆっくり散策し伊勢のパワーを沢山心に吸い込んだ。その後、伊勢神宮から車で2時間程で行けるアサコのオススメの「丸山千枚田」に向かった。

丸山千枚田(まるやませんまいだ)は、紀和町丸山地区の斜面に出来た棚田で日本の棚田百選にも選ばれている。一口で風景と言っても、自然そのものが作り出すものもあれば、人間が手を加えながら調和から生まれる自然の美しさもある。棚田や田園風景は人間の生活と共にある風景で、田植えや稲刈りの時期により四季折々変化し違った情景が見られるのだ。

夕刻の景色が素晴らしいと聞いていたので、夕刻を狙って丸山千枚田に着くと、水の張った田の水面は鏡のようになり、オレンジの夕日が映り光り輝き瞬いていた。

「あぁぁ…綺麗…」思わず自然が織りなす情景に感動した。何て幻想的なんだろう。あまりの美しさに言葉が見つからなかった。キラキラした水色の水面が黄色、オレンジ色と変わり、暮れていく空と呼応し段々とピンク、薄紫、そして夜の紺色へと変化していく様を飽きずにじっと見つめていた。アサコが言うには、これは丸山千枚田の「春の顔」で季節ごとに違った顔(景色)が見られるそうだ。棚田を見ながら今まで仕事三昧だった自分を振り返った。

夏は真緑の稲穂が田を埋め尽くし、年に一度行われる「虫おくり」で1340個の灯りが灯され、幻想的な世界が広がる。秋は黄金色に輝く棚田、冬は雪に覆われた景色が広がるという。四季により変わる美しい丸山千枚田は自然と人間が作り出す貴重な宝物だ。この光景を社内で写真好きの坂口先輩に見せたい、という思いまでわきあがり、自分でも気づいていなかった先輩への思いに自分で驚いた。夕刻が過ぎるまで、私とアサコは棚田のキラキラと輝き瞬く水面をじっと見つめていた。

プロフィール

本山浩子

東京都出身 イラストレーター 人物のハッピーでキャッチーなタッチと風景の和む優しいドラマを感じるタッチで出版・広告等で、大人から子供向けまで幅広い世代に愛されるイラストを手掛ける。2013年に読売新聞夕刊で毎週「本山浩子の駅前とことこ」で散歩イラストエッセイも連載。
47エッセイでは旅に出たくなるような47都道府県の名所のイラストを楽しく描き綴る。
MH-Alegria

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