エッセイ

47都道府県 イラストで名所巡り♪

山口県「角島大橋」夏

35回目は山口県の「角島(つのしま)大橋」です。

山口県にも沢山名所があります。
秋吉台、瑠璃光寺、錦帯橋、巌流島、元乃隅神社など、どこも行ってみたい場所ばかり。
今回もどこを絵にするか迷いました。

山口県は修学旅行で訪れました。その時の記憶は殆どなく、船に乗り、大きく長い迫力ある関門橋を見たことだけはうっすらと覚えています。
その修学旅行の時は「角島大橋」はまだ建てられていませんでした。
「角島大橋」はコバルトブルーの透明度の高い海にまっすぐ伸びる白い橋。
遠景に見える緑色の山々も映え絶景なので、CMや映画にも使われています。

今回もいつか訪れてみたい場所を絵に描くことにしました。
短編小説のような気分で読んで頂けたら嬉しいです。

「角島大橋へ」(創作小説)

久しぶりに実家の山口に戻ってきた。父は六年前に他界し、今は母が一人で実家に住んでいる。
つい先日、母が階段の段差につまづいて転び、足首と腕を捻挫した。母は電話越しでは「大丈夫。心配いらないわ。」と明るい声で話していたが。今回ばかりは少し心配になり、居ても立っても居られなかったのだ。

夏の山口は暑い。日差しがジリジリと肌に染み込む。実家に戻ると母は以前より少し小さくなったような気がした。変わらず明るい笑顔で迎えてくれた。怪我の様子も思ったより軽いようだ。娘が戻ってくるとなると落ち着かないのだろう、怪我をしているにも関わらず前日から沢山料理を作り、準備してくれていたのだ。肉じゃが、コロッケ、だし巻き卵、ほうれんそうのナムル、鶏大根、野菜炒め…実家の母が作ってくれる料理はどれも絶品で世界一!心の中で感動した。
夕飯を食べながら、実家の周りで最近変わったことを話してくれた。近所に大きなホームセンターができたこと、母校の小学校が子供の数が減り廃校になったこと、母の同級生が3度目の結婚をしたこと、楽しそうに報告してくれた。

翌日、せっかくだからどこか遠出しようとなった。親子でわざわざ行くところなんてあったかな…と考えていると。ふっと車のCMや映画のロケ地にも取り上げられていた「角島大橋」を思い出した。「角島大橋」は角島と本州を繋ぐ2000年に開通した美しい橋だ。母もまだ行っていないという。早速準備をして母の軽自動車に乗り込んだ。今日は私が運転することにした。

角島大橋を渡る前に橋が一望できるスポットとして有名な「海士ヶ瀬公園」へ寄った。そこから全景を見ると、白い角島大橋がコバルトブルーの広い海の上を一直線に伸びる姿は幻想的だった。あの橋の先にある角島はきっと素晴らしい楽園だろう、想像で頭が一杯になった。
「海士ヶ瀬公園」を出て、いよいよ角島大橋を渡る。走りながら海風を感じ爽快な気分だ。左右に見える海は太陽に照らされキラキラと光が瞬いていた。
角島の名前の由来は島内の2つの岬が角(つの)のように見えるので角島というそうだ。角島では、角島灯台、つのしま自然館、白い砂浜の角島海水浴場を周った。帰り角島を出る頃には夕方になっていた。夕景はまた昼間とは違っていて、空と海の色が青からオレンジ、黄色、ピンク、赤、紫、に変化し、夕日が落ちると共に変わりゆく様子に自然と心が安らいだ。
母親も高齢になり、こうやって一緒に過ごせる時間は一体どのぐらいあるのだろうか…帰りの車の中でふと考えた。母親が元気な内にまた美しい景色を二人で一緒に観に行きたい…それも一つの親孝行だろう。今日一日を思い浮かべながら、強くそう思った。沢山観て周ったので疲れたのか助手席の母は幸せそうな笑みを浮かべながらぐっすりと眠っていた。

プロフィール

本山浩子

東京都出身 イラストレーター 人物のハッピーでキャッチーなタッチと風景の和む優しいドラマを感じるタッチで出版・広告等で、大人から子供向けまで幅広い世代に愛されるイラストを手掛ける。2013年に読売新聞夕刊で毎週「本山浩子の駅前とことこ」で散歩イラストエッセイも連載。
47エッセイでは旅に出たくなるような47都道府県の名所のイラストを楽しく描き綴る。
MH-Alegria

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