エッセイ

信号はMIDORI色。さあ、渡ろ。

中東の生活のはじまり、それは気力より、やっぱり体力。

凍死しそうなぐらい凍えた空港での4時間以上の待ちぼうけから、やっと人事部のムスタファ(Mustafa)の待つ空港出口までやって来た。

とにもかくにも空港から一歩出た途端、そこで今までの寒さがウソのようにモワーんとする熱された独特の外気の臭いが鼻をつき、100%湿気のような空気は、いっぺんに肌をべっとりとさせた。辺りは深夜というのに迎えの人たちでごった返していたが、中には暑さをしのぐために空港に集まっているインド人やパキスタン人でごった返していたようだった。

迎えの車は地下駐車場に停めてある。 私の3個の大型スーツケースを運ぶムスタファとその相棒に、話す元気も失った私はただ後をついて歩いていた。
エレベーターでずいぶん下まで降りたそこには、海外から来た、しかも当時はまだアブダビでは珍しい外人「日本人」のマネージャーを迎えるためのホテルのベンツが止まっており、私は力なく乗り込んだ。

中東の夜の蒸し暑さに外国から来た人私のために車内のエアコンはしっかり過ぎるほど効いている。なんと16℃だ。この国では、冷えた車でのお迎えこそが、アラブの国の第一印象「ホスピタリティー・おもてなし」なのだろう。ベンツの革張りシートもキンキンに冷えていた。寒いからエアコンを切ってとも言えず我慢するしかない。

それから数分走ったところで、ムスタファが「何か飲み物はいらない?」と聞いてきて、日本のコンビニのような雑貨店に立ち寄り、エビアンとサンドイッチを買ってくれた。
「さあ、疲れているだろうからここからは寝ていいよ。車をぶっ飛ばして1時間半でアブダビに着くから」とんでもない!! すでにキンキンに冷えた私の身体がやっと外気に触れたばかり。いくらベンツの座り心地のよい皮貼りシートといえどもフリーザーのような車で眠れるはずもない。

しかし疲れ切っていた私は少しだけ耐え切れず居眠りをしていたようだった。「マダム、着きました」と言われて目を覚ますと白い壁のアパートの入口。目の前はエントランスの大理石の階段が見えた。ムスタファとその相棒は私のスーツケースを505号室に運んだ。

さあ、私の中東での住まいがいよいよ始まる。到着したのは深夜というより、もうそろそろ夜明けだった。

プロフィール

MIDORI

大阪府出身、現在は川崎市在住。大学在学中のウェイトレスアルバイト時代にお客さんから言われた「MIDORIちゃんの笑顔とおはようございますがいつも気持ちいいね」の一言が長く海外ホテルの仕事に就くことになるきっかけになったのかも。23年に渡る海外生活はアメリカ、台湾、中東、中国、マレーシア、特に中東のドバイは10年間もの滞在になりました。「迷っているなら、とにかくやってみよう」スピリットで、現在は仕事の傍ら、ある国家試験に向け猛勉強中。好きな食べ物はポップコーンと白ワイン。

写真
このシリーズの一覧へ
エッセイをすべて見る
47PRとは
47PRサービス内容