エッセイ

五感で感じるエッセイ『イン・ラケ'ッチ!』

女神が見守る町 -自由が丘-

雑貨の町、スイーツの聖地とも呼ばれ、町全体が丸ごとひとつのテーマパークのような、ここ自由が丘。 駅前から放射状に広がる大小の通りには、それぞれかわいらしい名前が付いていて、心ときめくショップが私たちを待っている。 青山や代官山ほど気後れしないし、銀座や丸の内ほど高級すぎない。ちょうどいいのだ。みんな、ちょっとだけお洒落をして、スイーツと一緒に、この町の幸福感を味わいにやってくる。

一年を通じて、様々なイベントが開催される。聖地の名にふさわしく本物のお菓子の家が展示される「スイーツフェスタ」。 ワインの香りが漂い、シャンソンライブが行われ、パリの街角にいるような気分になれる「マリ・クレールフェスティバル」。 そして、毎年数十万人が訪れる自由が丘最大のイベント「女神まつり」。メインステージとなるロータリーのほかにも、ジャズライブの特設ステージが組まれ、通りにはイスとテーブルが置かれ、出店が並び、町中が熱気に包まれる。

縁あって、私は現在この町の外れに住んでいる。 おかげで、駅前だけでなく、中心地から離れた住宅街にも、素敵なお店が点在しているという事を知った。

外国映画に出てきそうな一軒家のアートギャラリー。 有名人が住んでいそうな隠れ家レストラン。 葉っぱで覆われた、まるで森の中にいるようなカフェ。

これから自由が丘に来る方は、是非、この町の奥深くまで足を延ばす事をお勧めする。ガイドブックに載っていない秘密のお店を見つける事が出来るかもしれない。

さて。そんな魅力いっぱいの自由が丘だが、たった一つ難点がある。それは、迷路のように入り組んだ路地の多さである。引っ越したばかりの頃は、どことどこが繋がっているのかさっぱり分からず、行きたい店を求めて、とても遠回りしたり、何度も同じ場所をぐるぐる回ったりしていた。

すると。そんな迷い人に天使が降りてくる。 「セザンジュ」と呼ばれる街角コンシェルジュである。「セザンジュ」とはフランス語で“彼女の天使たち”という意味だ。“彼女”とは、ロータリーに立つ自由が丘のシンボル「女神様」のことである。

「セザンジュ」は、産業能率大学に通う大学生で構成されている。国内最大級の商店街組織、自由が丘商店街振興組合と産業能率大学がタッグを組み、「体感治安」という防犯活動の一環で誕生した。
「スマホに負けない案内」を合言葉に、お揃いのコスチュームで街角に立ち、笑顔で迎えてくれる。胸に抱えたバインダーには地図が挟んであり、現在地と目的地までの道順を丁寧に教えてくれたり、「どこかお探しですか?」と積極的に声をかけてくれる。 ただし、活動日時は日曜日と祝日の12時~15時のみである。 町の安全と活性化への貢献が認められ、2013年には目黒区より「青少年社会貢献表彰」を、そして、今年は東京都より「東京都青少年・治安対策本部長賞」を受賞している。

地元の人々が一致団結して、この町を盛り上げようと努力している。“テーマパーク”としての自由が丘はこうした人々の下支えで成り立っている。

深夜。女神のロゴが印刷されたオリジナルのピンク色のゴミ袋が、店先に並ぶ。これは、民間会社に委託して、深夜から早朝に各店舗のゴミを個別収集しているからだ。早朝の繁華街の酷い有様を目にする事があるが、この町はそんな舞台裏は見せない。それが自由が丘プライドだ。

今日もまた、たくさんの人がこの町にやって来て、幸せな時間を過ごして帰って行くことだろう。訪問者の笑顔がこの町の人たちの笑顔になる。そして、そんな笑顔の連鎖を“彼女”は静かに見守っているのだ。

プロフィール

白川ゆり

CASA DE XUX代表/アロマハンドセラピスト/アロマテラピーアドバイザー
2009年~ マヤの聖地を巡るワールドツアーに参加。パレンケや先住民が住むラカンドン村等、数々のマヤの聖地を訪れる。
また、国内外のマヤの儀式において、火と香りで場と人を浄化する「ファイヤーウーマン」を務める。
2011年~ マヤの伝統的な教えを伝えるワークショップを開催。
マヤカレンダーからインスピレーションを得たオリジナルアロマミストシリーズ「ITSUKI」を制作。

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