五感で感じるエッセイ『イン・ラケ'ッチ!』
タピオカ狂騒曲
タピオカといえば、私には、ココナッツミルクに沈む白いタピオカをスプーンで掬って食べる「タピオカミルク」の方が馴染み深い。中華料理などの締めのデザートに出てきて、脂っこさをスッキリさせてくれる乳白色のぷにゅぷにゅである。
そんな白いタピオカ世代の私は、ブームとなっているタピオカティーにほとんど興味はなかった。だが、もはや社会現象にまでなっている今、遅ればせながら、その世界を覗いてみることにした。
これまでにも、およそ10年周期でタピオカブームが来ていて、今はその第三次ブームらしい。2013年、タピオカミルクティー発祥の店「春水堂(チュンスイタン)」が、東京代官山に日本第一号店をオープンさせた。これを皮切りに、次々と台湾からの出店ラッシュが続き、三回目のブームが幕を開けた。
現在、日本中を席巻している「タピオカティー」に入ったタピオカは、黒い。カラメルで着色してあるブラックタピオカである。黒くなっても味も食感も変わらない。では、なぜ黒くなったのか。答えは至ってシンプル。
「インパクトが強いから。」
着色したことで、ミルクティーの底に沈んでいても、はっきりと存在を主張する。また、黒以外にも、カラータピオカと呼ばれるカラフルなものまである。今回が過去二回のブームと違うのは、視覚的な「SNS映え」が支持されたことだ。いかに「映え」るか。それがブームを作る大きなカギとなっている。
タピオカの語源は、ブラジルの先住民のトゥピ語でデンプン製造法を「tipi’oka」と呼ぶことに由来する。ほとんどが炭水化物だが、ミネラルも豊富に含まれている。 ただし、カロリーも高いので要注意とのこと。
タピオカは、イモの一種である<キャッサバ>の根茎から採ったデンプンで出来ている。 これを水で溶き、加熱。練ったタピオカを特殊な容器に入れて回転させ、遠心力で丸くする。これを乾かすと<タピオカパール>になる。この<タピオカパール>を茹で戻すと、おなじみの食感のタピオカになる。
なんと! タピオカは芋だったのか!
有毒な成分「シアン化合物」が含まれているため、毒抜き処理の済んだものがはるばる海を越えてやってくる。
もともとの原産地は南米だが、日本ではそのほとんどを台湾から輸入している。
ブームのおかげで、輸入量は前年比の4.3倍、過去最高となった(大阪税関 2019年上半期)。
そのベースには台湾人気がある。旅行先の人気ランキングが、ハワイを越えて台湾が堂々一位になったのだ。
激戦区であるスイーツの聖地自由が丘では、専門店が14店舗もひしめき合っている。
ぶっといストローで黒いぷにゅぷにゅを飲んでいる若者が、街の至る所に出没している。 なぜ、みんな、特に若い女子はこれほどまでに「タピオカ」にハマるのか。
食べ歩きに最適で、腹持ちがよく、スイーツ感覚もある飲み物で、見た目もかわいい。 …タピオカのことがちょっとずつわかってきた。
飲み物と言うより、台湾のおいしいスイーツなのね!
タピオカを飲むという意味の動詞、「タピる」は、昨年、JC・JK流行語大賞で1位を獲得した。また、タピオカの入っているスイーツを食べたり飲んだりして、タピオカに触れる活動のことを「タピ活」と言うなど、新語が生まれ、さらに、つい先頃、期間限定の「東京タピオカランド」というテーマパークまでできてしまった(19年9月16日まで) http://tokyophotogenicteam.com/tapioca/
勢いの止まらないタピオカ旋風。 そういえば、江戸の昔、浮世草子の作家、井原西鶴も「とかく女の好むもの『芝居 浄瑠璃 芋蛸南京(いもたこなんきん)』」と言っている。
イモタコナンキン。
例えが古すぎるが、時代は移り変わっても、やっぱり、女子はイモ好きなのだ。 まだまだ残暑は厳しい。キーンと冷えた「イモ」を楽しみに、私、タピって来まーす!
プロフィール
白川ゆり
CASA DE XUX代表/アロマハンドセラピスト/アロマテラピーアドバイザー
2009年~ マヤの聖地を巡るワールドツアーに参加。パレンケや先住民が住むラカンドン村等、数々のマヤの聖地を訪れる。
また、国内外のマヤの儀式において、火と香りで場と人を浄化する「ファイヤーウーマン」を務める。
2011年~ マヤの伝統的な教えを伝えるワークショップを開催。
マヤカレンダーからインスピレーションを得たオリジナルアロマミストシリーズ「ITSUKI」を制作。