エッセイ

五感で感じるエッセイ『イン・ラケ'ッチ!』

再びの人形町~春の七福神巡り~

「ベルサイユ自体が一つの町なのだ」
唐突だが、ご存じ不朽の名作コミック『ベルサイユのばら』で、ベルサイユ宮殿を見た事がなかったロザリーに、かのオスカル様が言った言葉である。
ベルサイユと人形町は全く関係ない。だが、この町に降り立つと、必ずこの言葉を思いだす。そして、
「人形町は、それ自体がひとつの大きな神社なのだ」
と、オスカル様ばりに胸を張りたくなる。空は高く、車道も歩道も広い。町を貫く人形町通りは、まっすぐに伸びる参道のようだ。
そう、この町は、まるで広大な神社の境内のような雰囲気なのだ。足元から立ちのぼって来る「土地のエネルギー」や「清々しさ」は、まさにパワースポットと呼びたいほどだ。

ちょうど2年前、江戸情緒を味わいながら、ここでどら焼きの食べ歩きをした。

今回は人形町を一回りすると巡れる「日本橋七福神めぐり」である。
ほら、ね。私の「勘」は間違っていなかった。この町にはあちこちに神様がいる。

「日本橋七福神めぐり」は、出発点が定められていない。他所と異なり、すべて神社で構成され、しかも日本で一番巡拝が短時間で出来るという特長がある(日本橋七福会 日本橋七福神めぐりリーフレットより)。
七福神は、室町時代から始まったと言われる民間信仰の一つである。お参りすると、七つの難を逃れ、七つの幸福を授かると言われている。
七柱の神様が宝船に仲良く並んでいる姿を思い浮かべるが、実は、七福神の中で日本の神様は恵比寿様だけである。他の神様は、ヒンドゥー教や道教など、インドと中国の混成チームだ。国も宗教も異なる神様を「福徳」でひとまとめにして宝船にご同乗頂き、御利益を願うのは、さすが日本人ならではの発想である。

元旦から正月7日までは、授与品として、神社のご朱印を頂くための色紙や御神像を、各神社で購入出来る。それ以外の日は、事前にご朱印帳などを用意して行くといいかも知れない。昨今巷ではご朱印収集(集印)が静かなブームで、オシャレなご朱印帳が雑貨屋さん等で手に入る。

それでは、「七福神めぐり」を始めよう。
まず、この町のリーダー的存在で、昨年新社殿が完成したばかりの「水天宮」を参拝。安産祈願で有名なこの神社には、宝生弁財天が祀られ、芸事・学業・金運に御利益が名高い。

次に、町内の人々に「お茶ノ木様」と親しまれている「茶ノ木神社」へ。防災・生産の神様として布袋様が祀られている。鳥居はあるが、道路に面していて、こじんまりとした印象。一対のお稲荷さんが愛らしい。

鮮やかな赤い鳥居の「松島神社」は大黒様をはじめとする十四柱もの神様が祀ってある。これは、江戸初期に全国から職人が集められた際、各地の神様を町の中心であるこの神社で合祀したためだ。別名を大鳥神社ともいい、毎年11月に酉の市が開かれる。

民家の隣にそっと佇むような「末廣神社」は、勝運向上の毘沙門天様が祀られ、厄除け、財運向上、福徳繁栄などを求めて参拝客がやって来る。

たくさんのキツネの石像に守られた「笠間稲荷」は寿老神が祀られ、かつては日本橋魚河岸の守り神として、広く信仰を集めていた。長寿・幸運の神として人々の運命を開拓して下さるという。

創建から千年以上経つという「椙森神社」は江戸三森(えどさんもり・えどさんしん)のうちの一つ。江戸三森とは江戸時代に森の字を共有する代表的な神社、椙森・烏森・柳森の総称である。
ここには恵比寿様が祀られていて、江戸時代に宝くじの元祖である「富くじ」が行われていた。当時にあやかろうと高額当選を願って参拝に来る人もいる。
私も、境内の富塚に念入りにお参りした。

そしてゴールは、「小網神社」。福禄寿様と銭洗い弁天様が祀られている。ひっきりなしに訪れる参拝客は、順番待ちをして、弁天様の石像から流れる清冽な水でちゃぷちゃぷと銭を洗う。
私もやってみた。あら不思議。なんだが、ピカピカになった!これで金運上昇間違いなし!

「日本橋七福神」は、町並に溶け込み、町と一体となっていた。
買い物や情報など生活のほとんどがスマホひとつで片付いてしまう現代。小さな幸福を求めて、自分の目で見、耳で聞き、足を運び、体で感じる。そんなささやかな行動が、小さな画面の中にはない「何か」を見つけるきっかけになるかも知れない。

春はもうすぐ目の前に来ている。町歩きに絶好の季節だ。歩くだけで幸せになれる町、人形町へ行こう!
おみやげには「思い出を持ち帰る」をコンセプトにした「人形町ハンカチ」をどうぞ。

http://www.47pr.com/shohin/022.html
…数日後。衝撃的なニュースを知る。

デビュー50周年記念展 池田理代子 ―「ベルばらとともに」―
日本橋高島屋 8階ホール 2017年3月8日(水)~20日(月・祝)

な、な、なんと!オスカル様が本当に日本橋においでになるぞ!行かなきゃ!

プロフィール

白川ゆり

CASA DE XUX代表/アロマハンドセラピスト/アロマテラピーアドバイザー
2009年~ マヤの聖地を巡るワールドツアーに参加。パレンケや先住民が住むラカンドン村等、数々のマヤの聖地を訪れる。
また、国内外のマヤの儀式において、火と香りで場と人を浄化する「ファイヤーウーマン」を務める。
2011年~ マヤの伝統的な教えを伝えるワークショップを開催。
マヤカレンダーからインスピレーションを得たオリジナルアロマミストシリーズ「ITSUKI」を制作。

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