エッセイ

47都道府県 イラストで名所巡り♪

佐賀県「虹の松原」夏

たくさんの外国人観光客が日本にやってきているので、街中やレストランで外国人を見たり、違う言語が聞こえてくるのが珍しくなくなりましたね。

いろいろな国の方々が日本に興味を持って観光に来て下さるのは本当に嬉しいですね。そんな外人観光客の方にもこのエッセイを見てもらえる機会があれば良いなと常々思っています。日本には隠れざる名所がまだまだたくさんあります♪

この47PRのサイトとエッセイでは全国の都道府県の魅力をそれぞれの視点から紹介しています。私の連載は全国の名所をメインに都道府県の魅力をエッセイや小説と共にお届けしています。今回で43回目、残り5ヶ所で47都道府県制覇です!
 

今回は佐賀県です。佐賀県は去年の「都道府県魅力度ランキング」で最下位でした・・・(ちなみに第一は北海道)。佐賀にも魅力的な場所がたくさんあるのに、大変残念な結果ですね。

大分昔になりますが、お笑い芸人の佐賀県出身はなわさんが「佐賀県」という歌を歌っていました。「LOVE SAGA、LOVE SAGA」というフレーズと共に佐賀県の残念な部分を面白おかしく笑い飛ばして、県民愛を感じる歌でした。この歌を思い出しながらエッセイを書いています。

今回佐賀の景勝地であり国の特別名勝、玄海国定公園に指定されている自然遺産「虹の松原」に、ある家族が旅に出かけました。短編小説で佐賀県の魅力をお届けします。

「ご褒美旅」

娘のあゆみの中学受験が終わり、小学校卒業と中学校入学の準備で春休みは慌ただしく過ぎていった。新しい学校に慣れ、友達ができ、落ち着いたのはGWを過ぎた頃。
あゆみが突然「お母さん、受験終わった後に旅行に行く約束していたのに、まだ行ってないね。夏休みに行こうよ!」と思い出したように言ってきた。

夏休みのあゆみの部活がない日を選んで、旦那と私も仕事を休み、1週間の旅行に出かけることにした。旦那が家族でドライブ旅行はどうかと言いだし、福岡から、佐賀、長崎を巡る旅をすることになった。

福岡からはレンタカーで1時間ちょっとで佐賀県に入り、唐津湾に面した「虹の松原」にやってきた。

ここは国の特別名勝に指定され、三大松原のうちの一つとされている。唐津湾に沿って松原が虹の弧のように広がっていることから、この名前がついたそうだ。防風、防潮林としての目的で植林を始めて、今では松の木が100万本あるそうだ!

弧を描いた虹の松原の先には大きく青々とした海が広がっている。なんて大きい海なんだろう。その壮大な景色に家族みんなで「わーーー!!」と笑顔と共に大きな感動の声が出た。

美しい風景を堪能しながら、旦那が突然虹の松原の「七不思議」について語り始めた。調べてみると、「にらみの松」「松原には蛇がいない」「黒松ばかり」「槍掛けの松」「松原の中心と藩堺」「松原には蝉の声がしない」「松原の真ん中に真水」の7つ。にわかに信じられないような不思議な話があるものだ。

暫く7不思議について談笑していたが、家族の会話が途切れると各々が静かに目の前の穏やかな景色に吸い込まれていった。

去年の夏休みを思い出す。あゆみは毎日夏期講習で勉強ずくめだった。私と旦那は頑張る娘の隣に座り、一緒に勉強したり、プリント整理に食事、健康などサポートに勤しんだ。中学受験は言われていた通り「家族の受験」だった。途中いろいろなドラマがあったが、家族一丸となり目標に向かって走った日々は大変ながら充実し貴重な経験だった。思い出すと、今でも心がじんわりとあたたかくなる。

「去年はよく頑張ったよね」、「うん」とあゆみが返事をした。簡単な返事の奥にある深い安堵が伝わってきた。

これからあゆみは一人で自分の目標に向かってチャレンジしていかなければならない。受験と同じように上手く行く時もあれば行かない時もある。そんな時にこの広大な美しい景色と、あの頃家族と一緒に頑張って走り抜いた自分の姿を思い出して欲しい。

「さぁ、次の場所に行こうか!」
旦那がそう言うと、あゆみは笑顔でうなずいた。試練をひとつのりこえて成長した娘の横顔を私は感慨深く見つめた。

プロフィール

本山浩子

東京都出身 イラストレーター 人物のハッピーでキャッチーなタッチと風景の和む優しいドラマを感じるタッチで出版・広告等で、大人から子供向けまで幅広い世代に愛されるイラストを手掛ける。2013年に読売新聞夕刊で毎週「本山浩子の駅前とことこ」で散歩イラストエッセイも連載。
47エッセイでは旅に出たくなるような47都道府県の名所のイラストを楽しく描き綴る。
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